近くにいるための嘘

「あ、美桜ちゃんも帰り?」
悠太郎くんに声を掛けられる。

ぼんやりと一人で駅に向かって歩いていた。
莉子はバイト、陽菜と芽依はサークルがあるとかで急いで帰ってしまった。

「駅だよね?一緒に帰ろ」

……推しと、一緒に帰る。
どんなご褒美ですか、神様。

「……ねえ、なんで俺に投票してくれてたの」
悠太郎くんが少し恥ずかしそうに聞く。

「一目惚れ」
「TikTok見てたら、悠太郎くんの自己紹介流れてきて」
「それで、気になって番組見たの」

「……まじ?嬉しい」

「……悠太郎くん脱落した時、泣きすぎて次の日学校休んだ」

「なにそれ、そんなに応援してくれてたの?」
「……ほんとにありがと」
「俺、今めっちゃ嬉しい」

今、推しの笑顔は私だけに向けられている。

「……そんな。むしろ、ファイナルまで連れて行けなくてごめん」

「それは仕方ないよね」
「俺の実力不足」

「そんなことない」
大きな声が出た。
「悠太郎くんは、ダンスも歌も上手だった」
「私ね、オーディション番組とか見たこと無かったけど、悠太郎くんのステージ好きだったよ」

「まじで嬉しい。ありがとね」

悠太郎くんが真っ直ぐに私を見る。

悠太郎くんの瞳に、私が映っていた。
……吸い込まれてしまいそうだった。