近くにいるための嘘

「美桜、サークル決めた?」
莉子が聞いてくる。

「ううん、全然」
そもそもやりたいこととか、分からなかった。

「なんでも良かったらさ、このベーカリー研究会っての一緒に入らない?」

「いいよ」
「莉子、最初の自己紹介でもパン好きって言ってたもんね」

ーー
「新入生たくさん来てくれてありがとー!」
感じの良い先輩たちだ。

「新入生、自己紹介してもらえる?」

「橋本莉子です」
「パン大好きなので、このサークルだ!と思いました」
「よろしくお願いしまーす」

「藤野美桜です」
「パン、そんなに詳しいわけじゃないんですけど、楽しそうだなと思って入りました」
「よろしくお願いします」

「朝比奈紬です」
「パン焼くのも食べるのも大好きです」
「よろしくお願いします」

隣に座っていたこの子が、
これから私の人生を狂わせていくことなんて、まだ誰も知らない。