近くにいるための嘘

「美桜ちゃん、東京は慣れた?」
「怖いこと無い?」

「ママ、大丈夫だよ」
「友達もできたの」

しょっちゅうママから電話がかかってくる。
……ちょっと過保護だけど、嬉しい。

「あとね、聞いて」
「推しと同じクラスだった」

「え?あのユウタロウくん?」

「そう、私がずっと推してた、あのYUTAROくん」

「あら、美桜ちゃんすごいじゃない」
「仲良くなっちゃったりして」

「美桜ちゃん、って呼ばれちゃった」

思い出してベッドを転げ回る。
やばい、推しに名前呼ばれるなんて。

「じゃあ楽しそうね」
「ママも安心」

「うん、安心して」
「大丈夫だから」

バイバイ、と電話を切る。

大学が始まったら、毎日悠太郎くんに会える。
……そんなこと、ある?

いつも画面越しに見ていた推しが、現実にいるなんて。