近くにいるための嘘

……ここで、4月から大学生活を送る。

自分に言い聞かせて、門をくぐる。
大丈夫。YUTAROくん、力を貸してね。

ボロボロのノートを抱き締める。

「行ってきます」
見送りに来てくれたママに手を振る。

ーー
「よーい、はじめ!」

ふーっと深呼吸をしてから問題を開く。
……大丈夫、解ける。

あ、これ、あのノートに書いたやつ。
何度も何度も見返した。
……うん、分かる。

ーー
試験はあっという間だった。

なんか、解けた気がする。
……ありがとう、YUTAROくん。

ふと、すれ違った男の子が気になって振り返る。

人混みに紛れて、もう姿は見えない。
……東京は、やっぱかっこいい子いるんだな。
え、4月から一緒だったりして。
……ちょっと楽しみかも。

何の根拠も無いのに、合格している気がした。

さっきすれ違ったのは、ノートに貼ってる推しだったなんて、夢にも思わなかった。