本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

◇◇◇

「ええと……ここで合ってるかな」

 アズライトさんに指定されたカフェの前にやって来た私は、外観とメールに添付された地図を交互に見比べて確認をする。
 白い外壁の周りに緑が生い茂る、ナチュラル系のカフェ。
 いきなり自宅に行くのはさすがに怖いので、アズライトさんからカフェで会うことを提案されて内心ホッとした。

 店員さんに名前を告げると個室に案内される。落ち着いてゆっくり話せるよう、アズライトさんが配慮してくれたんだろう。
 アズライトさん、一体どんな人かな。
 藍堂鷹司の小説はキャラクターがかっこよくて魅力的だからか女性ファンが多いので、なんとなく女性のような気がする。
でも、17年も前のインタビュー記事を持っていたり、妙に落ち着いて達観した雰囲気を醸している時もあるので、シニア世代の男性とかの可能性もーー

「失礼いたします。お連れ様がおいでになりました」

 店員さんの声にハッと我に返る私。
 いよいよご対面。
 ドキドキしながら店員さんが開けた扉から個室に入ると、そこに居たのはーー
 眼鏡をかけた、理知的な若い男性だった。
 一番予想していなかったパターンに、私は内心慌てふためく。

 年齢は30歳くらいだろうか。
 黒のセルフレーム眼鏡の奥に見える瞳は、とても綺麗で。
 キリッとした眉。
 すっと高い鼻。
 薄めの唇。
 柔らかそうな黒髪から覗く額も美しい。
 全てが彫刻のように整っていた。