本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで


 藍堂先生の創作の邪魔をしないよう、静かに扉を開ける。
 椅子に座り、パソコンと向き合う藍堂先生の背中が見えた。
 集中している様子だ。
 私は藍堂先生の手が届く位置にワゴンを止めて、書斎を後にした。

「ふぅ……」

 失敗せずに遂行できてよかった。今になって手が震える。藍堂先生の創作の邪魔をしてしまったら、私は自分が許せなくなるから。

(それにしても、かっこいい書斎だったな……)

 片側の壁は全面本棚で、綺麗に整頓されていた。
 あの部屋で数々の名作が生まれたんだなぁ。静かに噛み締める。

(って、浮かれてる場合じゃない!)

 私は今のうちに夕食の献立を考えておくことにした。
 冷蔵庫や棚を一通り眺めた。食材は米・食パン・肉・野菜などまんべんなく揃っている。前任のハウスキーパーの方の優秀さに感謝だ。

「仕事が忙しいから片手で食べられるものがいいんだけども……やっぱり、おにぎり? でも、他人が握ったおにぎりは食べられない場合もあるかなぁ」