本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで


 私はごくりと固唾を飲み込む。
 だって、好きな小説家の書斎なんて、ファンからすれば聖域だ。

「勿論。ただ、書斎の中では話しかけないでほしい」
「厳守いたします。先生の執筆の邪魔はいたしません。ところで、アレルギーや苦手な食べ物とかはありますか」

 私は忘れないようメモを取ってから、藍堂先生に質問をする。

「どちらもないな。正直に言うと、俺は食べることにあまり興味がないんだ。執筆のための健康維持ができれば」
「な、なるほど……」

 だから藍堂先生はスリムなのかなぁ。私は食べることが好きなので、体重計とにらめっこすることが多いのだけれど。

「今抱えてる仕事の締切はまだ先だから、時間の余裕がある。君の引っ越しが完了してから、ハウスキーパーの仕事を開始……という流れで構わないか?」
「はい、問題ありません。引っ越しの手続きをして、今日は帰宅するということでーー」

 ♪~~

 私が話している途中で、スマホの着信メロディが流れ出した。

「俺だ。ちょっと待っていてくれ」
「お気になさらないでください」

 藍堂先生はスマホを取り出して話し始めたので、私は少し離れて後ろを向き、会話を聞かないようにした。
 しかし。

「はぁああーーっ!? 締切が3日後!?」