本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで


 藍堂先生がドアを開けた部屋は、広めの洋室だった。
 エアコンがついた白い壁に、床は淡いベージュ色のフローリング。窓から日光が差していて明るい。
 それから、シンプルな木製のデスクとベッドに小さなタンスもある。

「えっ家具付きなんですか……?」
「ああ。こちらの都合で住み込みで働いてもらうわけだから、住環境を提供するのは雇い主の義務だ。収納棚の中のものも自由に使ってくれ」

 収納棚を開けると、中にシングル布団セットや、布団乾燥機などの小型家電が入っていた。
 綺麗なバス・トイレもついていて、一人暮らし用のワンルームといった感じだ。
 リビングに戻ると、藍堂先生は反対側のドアを指差した。

「あっちのドアが俺の書斎で、君の居住スペースと同じ構造になっている。締切間際は書斎から出て来ないが、気にしないでくれ。掃除は書斎以外を頼む」
「書斎の掃除は、先生がご自分でなさるんですか?」
「ああ、掃除をしてるとアイデアが浮かぶんだ」
「漫画家さんのエッセイで似た話を読んだことあります。鍋を磨いてるとひらめきやすいとか……」
「わかる、俺も浴室を無心で磨いてるとよく良いアイデアが降りてくるから」

 浴室を無心で掃除する藍堂先生の姿を想像したら、なんだか微笑ましくて。
 藍堂先生の知られざる意外なギャップに、私はほのぼのとした気持ちになった。

「朝食は9時、昼食は13時、夕食は19時頃にあのワゴンで書斎まで運んでくれ」

 藍堂先生は説明をしながら、キッチンの隅に置いてあるワゴンを指差した。

「ら、藍堂先生の書斎に入っていいんですか……!?」