本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

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 藍堂先生のスムーズな運転で、見るからに高級なマンションに到着した。
 と言ってもタワーマンションではなくて、低層で戸数が少なくプライバシー重視タイプ。周りは自然が多く静かだ。

「在宅の仕事だから、落ち着いた環境重視なんだ。都心に比べたら不便かもしれないな」
「私も静かな環境の方が好きなので、ここで暮らすことが楽しみです。徒歩圏内にスーパーやドラッグストアもコンビニもありましたし、不便じゃないですよ」

 話しているうちに、エレベーターのドアが開く。三階だ。藍堂先生の後について私も降りた。
 藍堂先生は立ち止まり、玄関ドアノブに鍵を差し込む。
 その間、私は部屋の番号を眺めていた。301号室。ちゃんと覚えておかないとね。

「どうぞ、入ってくれ」
「失礼いたします」

 藍堂先生が玄関ドアを開けてくれたので、私は会釈をしながら入る。
 インテリアは黒と白で統一されており、シックでかっこいい。おしゃれな大人の男の家という感じで、少しどきどきする。

「ここがリビングだ。君も自由に使ってくれ」

 ガラスのテーブルの周りにグレイのソファーが置かれている。次に案内されたのは、リビングの隣にあるダイニングキッチンだ。

「わぁ……綺麗なキッチンですね」

 キッチンはとても広く、食器や調理器具などひとつひとつわかりやすく整頓されていて、前任のハウスキーパーの方の有能さが伝わってくる。

「冷蔵庫の食材なんかも全部自由に使ってくれ。君の使い勝手がいいように変えて構わない」
「は、はい!」
「あのドアの向こうが、君の居住スペースだ」