本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

「……私でいいんでしょうか?」

 私が恐る恐る尋ねると、藍堂先生は柔らかく微笑む。

「ああ。栞さんはブログの文章から受けた印象と全く差異がないから、信用できる」
「あ、ありがとうございます」
「それに、初対面なのにこんなリラックスできたのは初めてだ」

 藍堂先生の言葉に私は深く頷いた。初めはイケメンすぎて面食らっていたけれど、雑談をする内にコメントをやりとりしていた時のような自然で楽しい空気になっていて。
 ネット上とはいえ、約半年交流をし、本好きの友人という関係を築けていたんだろう。
 なんとなく、やっていけそうな気がしたのだ。

「じゃあ、行こうか」
「はいっ」

 カフェを出て藍堂先生の後について歩き出すと、すぐに駐車場に着いた。
 立派な車がある。
 藍堂先生は助手席のドアを開けると、「どうぞ」と私に乗るように促した。

「し、失礼します」

 私が車に乗り込んだ後、通りかかった二人組の女性が話す声が聞こえた。

「ね、見て。あの人めっちゃイケメン!」
「ホントだ! 背も高いし、モデルとかかな?」

 彼女達の視線の先にいるのは、運転席に戻る途中の藍堂先生。
 女性の一人がこちらを向いたので、私は顔を見られないよう俯いた。

(イケメンの車の助手席にいる女の顔、気になるんだろうなぁ……)

 運転席に乗り込んだ藍堂先生は、彼女達の視線に気づいているのかいないのか、意に介している様子はない。

「出発するよ」
「は、はい」