本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

「あの、お若くて驚きました……作家になられて17年ですよね? ということは」
「ああ、デビュー時は13歳だったかな」
「あの話を13歳で……。藍堂先生が年齢を公表しない理由がわかりました。ノイズにしかならない」

 私が思わず呟くと、藍堂先生は一瞬驚いた顔をした後、にっこりと笑った。

「その通り。さすが、栞さんは俺のことをよく理解してくれている」
「きょ、恐縮です……」

 私は「話し込んでしまってすみません。本題のハウスキーパーの仕事についてなんですが」と切り出した。
 今日私は仕事を受けに来たんだ。
 仕事を持ちかけてくれたネット友達が、偶然好きな小説家だったというだけで。
 浮き足立った気持ちを切り替えて、藍堂先生の返事を待つ。

「創作仕事の性質上、集中している時に家事で中断すると仕事にならないので、ハウスキーパーを雇うようになって、」
「ええ」
「メインの仕事は朝昼晩の食事作り。そのために前任のハウスキーパーの男性には住み込みで頼んでいたんだが、引っ越してしまってね」
「住み込み……」
「間取りはこういった感じで、君が住む個室はリビングを挟んで離れているし、鍵もついているので安心してほしい」

 藍堂先生が広げた紙に載っている間取りに目を落とす。
 バス・トイレ付きの個室が両端にあり、間にリビング・ダイニングキッチンといった変わった間取り。
 確かにこれならプライバシーは確保される。
 仕事と住居の問題が一気に解決するのは、私としてもありがたいーーけれども。