【大河ドラマ】忙しい人のための新・安倍晴明物語

 天慶六年(942)春、晴明が上巳の祓に使う形代を折っていると、玉屑から剪紙成兵術を教えると言われた。折り紙に霊を宿し、傀儡として使役する術だ。自分に霊力が備わっているとは思いもしない晴明は、この術を使いこなせる自信などない。ところが、玉屑は暗に晴明がただの人間ではないことをほのめかし、晴明なら必ずこの術を会得できると言い張る。

 男女が密室に二人きりでいるのはよくないと嫌がる晴明のために、玉屑は彼の手を引いて縁側に出た。そして、懐から蝶の形をした折り紙を取り出し、息を吹きかけた。紙の蝶は瞬時に霊蝶と化し、彼女の命令に従い屋敷の庭を一周した。二人の前で庭の光景を見せた後、霊蝶は光の粒となって消えた。晴明も試しに蝶の折り紙に息を吹きかけたところ、霊蝶が生み出された。己に秘められた力に、晴明は驚き戸惑うばかりである。

 激しい雨が降り、玉屑は体が冷えてしまうと言って部屋に入った。晴明は退出しようとするが、玉屑に引き止められる。剪紙成兵術を使いこなすため、いろいろな形の折り紙を練習しようというのだ。晴明は玉屑に折り紙を教わる過程で、時々指が触れ合ったりして気まずい雰囲気になりながらも、たくさんの生物を折った。彼女は、いざという時にその折り紙を使うよう告げた。

 翌日、陰陽寮に藤原伊尹が訪ねてきた。兄の兼通が狩りをしていたところ、怪異に遭ったという。伊尹は、玉屑がいれば式神の力を駆使して事件を解決に導けると期待しているようだ。賀茂保憲は藤原氏との親交を深めるいい機会だと考え、玉屑を連れていくと約束する。

 兼通が狩りをしていたとき、偶然にも矢が上空を飛んでいた烏に刺さった。烏は地に落ちたと同時に、塵となって消えたという。兼通は家人に塵を回収させていた。晴明と保憲は塵を触ってみた。塵は黒々としており、ほのかな熱を帯びている。家人が回収した当時は、火傷するほどの熱さだったらしい。

 玉屑は塵の正体に心当たりがある気がして、屋敷に持ち帰って調べることにした。この塵は明らかに人間界のものではない。とはいえ、冥界にも同様の物質はない。晴明が剪紙成兵術による傀儡ではないかと指摘すると、彼女も同じことを考えていた。彼女の推測が正しければ、烏を生み出す際に用いられたのは普通の紙ではなく、霊力を帯びたものだろう。しかし、誰が何の目的で烏を放ったのかは分からなかった。晴明は玉屑に手鏡を渡し、泰山府君に尋ねてみてはどうかと提案する。だが、玉屑が現世に来てまもなくその方法を試したところ、冥界には繋がらなかった。人間界の鏡には、法術が通じないのだ。唯一、晴明だけが血のにおいを感じ取っていた。そのことを玉屑に伝えると「晴明は人より鼻が利くからだ」と言われた。玉屑は塵を袋に入れて、調査のため持ち歩くことにした。

 塵の正体が分からぬまま、上巳の祓の日が訪れた。鴨川の河原は大勢の貴族と烏で賑わっている。烏を目にしては警戒する玉屑を見て、晴明は「私が生まれた頃から平安京には烏が多かった。すべての烏が仙術による傀儡というわけではない」と宥める。玉屑いわく、冥界にも烏は存在するので見慣れてはいるが、塵になったものは見たことがないという。

 今のところ、烏が人間に危害を加えたという事件は陰陽寮に報告されていない。晴明には考えがあった。塵から血のにおいがしたのなら、烏も同様のにおいがするはずだ。それが感じられないのは、普通の烏である証なのだと。

 周囲の貴族たちはみな祓えをしているなか、晴明は玉屑を川辺に案内した。大量の形代が川に流されていくさまは、上巳の祓の風物詩だ。玉屑に祓えをしないのかと聞かれて、晴明はこう答えた。玉屑が祓えを意味のない行為だというのなら、自分もやらないと。

 天慶六年(943)夏、平安京は大干ばつに苦しんでいた。陰陽寮は朝廷から五龍祭を修して雨を祈願せよと命じられる。当然、普通の人間である陰陽師に雨を降らせる力などない。賀茂忠行は水を操れる玉屑に期待した。ところが、玉屑は「神仙が人間界に干渉することは許されない」の一点張りで、力を使おうとしない。

 玉屑が晴明を教育していることなど知らない忠行は、彼女が何のために現世に舞い降りたのか分からなくなってきた。もはや晴明以外の人間の目から見た玉屑は、毎日部屋に籠もり、食べては寝るだけの自堕落な生活を送っている女子である。

 晴明は、玉屑はまた自分に特殊な術を教える気なのだろうと薄々感づいていた。その予想は的中した。特別な力を秘めているものの、仙籍のない晴明ならば人間界の事情に干渉しても問題ないのだ。

 雨雲を発生させて雨を降らせる術は存在するが、玉屑は、他の陰陽師と同じようにただ祈祷して雨を降らせるのでは芸がないと考え、舞を舞ったらどうかと思い立つ。保憲は五龍祭を修する吉日を選定し、三日後に北山において雨を祈ると決めた。晴明は、その日までに舞を覚えなければならないのである。