【大河ドラマ】忙しい人のための新・安倍晴明物語

 天慶五年(942)春、晴明は屋敷の外から聞こえてくる鈴の音で目を覚ます。門の向こうで、白い外套を羽織った女が鈴を鳴らしていた。ほのかな月明かりの下でも、晴明はすぐに彼女が玉屑だと分かった。

 玉屑が屋敷に泊めてほしいと言うので、晴明は東の対屋を綺麗に片付けて、彼女を案内した。晴明が退出しようとすると、玉屑に引き止められる。「暴漢が侵入するかもしれないから、一緒に寝てほしい」。晴明は対屋の外から玉屑を見守るつもりでいたが、彼女は同衾を望んだ。生まれてこの方、一人で寝たことがなくて心細いのだと。

 晴明は動揺しつつも、玉屑の希望を拒んだ。男女が同じ布団で寝ると間違いが起こってしまうと。だが、玉屑はそれでも構わないと言う。晴明は渋々承諾したが、玉屑の貞操を守るため、彼女に背を向けて一夜を過ごした。背後から玉屑が絡みついてきたが振り払うこともできず、心が落ち着かなくて一睡もできなかった。

 夜が明けて、晴明が後ろを振り向くと、玉屑は寝ていた。無理やり起こすのも気が引けた晴明は、賀茂忠行と保憲に事の経緯を説明した。二人とも、玉屑が現世に現れたことに驚きを隠せない。出勤の時間が差し迫っていたので、晴明は忠行に玉屑を任せて、保憲と共に陰陽寮へ向かった。

 晴明と保憲が出勤して数刻後、玉屑は目を覚ました。彼女が晴明を探していると、賀茂忠行に見つかった。忠行は大いに驚き、噂に聞いていた神仙は実在したのだと五体投地で彼女に拝礼した。

 玉屑は人間界に光臨した目的を忠行に説明する。「私は将来有望な陰陽家である賀茂氏の前途を支えるため、人間界に舞い降りた」と。感激する忠行をよそに、玉屑は晴明と保憲を追って陰陽寮に向かった。

 この日は雲一つない晴天だった。真夏の太陽にじりじりと照らされ、玉屑が朱雀門の前にたどり着いた頃には汗だくになっていた。玉屑が木陰に座って休んでいると、彼女の神秘的な佇まいに興味を惹かれた藤原伊尹が声をかけてきた。具合が悪そうな玉屑を心配した伊尹は、彼女を抱きかかえて典薬寮に連れていく。

 典薬寮の医師たちは、遠巻きに玉屑の正体について噂しあう。あんなに美しい女子は仙女に違いないと好奇の眼差しを向ける者もいれば、人間を惑わす妖魔だと警戒する者もいた。唯一、丹波康頼は普通の患者と同じように玉屑を診察した。どのような存在でも、病人であれば治療する主義なのだ。闇に包まれた冥界で人生のほとんどを過ごしていた玉屑は、慣れない太陽の光を浴びたことで熱中症に冒されていた。康頼の勧めで、彼女は容態が回復するまで典薬寮で休むことにした。

 伊尹から宮中に来た目的を聞かれた玉屑は、簡単に自己紹介をする。「私は賀茂家の守り神で、保憲を見守るため陰陽寮に行くところだった」と。伊尹との会話を通じて、玉屑は式神という言葉を知る。式神は陰陽師が使役すると信じられている鬼神だが、実際にその姿を見た者はいない。玉屑は現世における身分を賀茂家の式神と定めた。康頼は守り神にも関わらず熱中症を治癒できない玉屑が不可解だと感じる。彼女が陽光に悩まされたのは初めての経験で、治し方が分からないのだ。

 伊尹は玉屑を賀茂邸まで送り届けるため、牛車を手配しようとする。玉屑は彼の提案を断って陰陽寮に行こうとするが、康頼に制止される。まだ日が高いのに、笠も被らず外に出るのは危ないと。康頼は伊尹に玉屑を任せ、保憲を呼びに陰陽寮へ向かった。

 授業を終えた晴明と保憲が帰路に着こうとすると、康頼が慌てて走ってきた。「賀茂家の式神が陽光に照らされ体調を崩したから、迎えにきてほしい」と。保憲は大いに驚き、すぐさま典薬寮へ走った。晴明も後に続いた。

 典薬寮において、玉屑は病み上がりの状態で保憲と対面する羽目になった。外では伊尹が呼んだ牛車が待機しており、彼は玉屑を連れて同車しようとする。すると、晴明が玉屑の看病を名乗り出て、二人で同車することになった。玉屑は牛車の乗り方が分からないため、晴明は彼女を抱きかかえて乗車した。

 車の中で、晴明は玉屑の無事を確かめて安堵した。そして、太陽が出ている間は必ず笠を被ること、単独行動はしないことを約束させた。今回は幸いにも伊尹の親切に救われただけだと。玉屑は未だ陽光の熱が頭に残っており、朦朧としながら晴明の話に耳を傾けていた。

 伊尹の牛車を見た忠行は大いに驚き、感嘆する。玉屑はあえて伊尹の前で体調が悪いふりをして、伊尹と賀茂家の縁を作ったのだと。神仙である彼女が熱にうなされたとは、夢にも思わなかった。

 玉屑は皆を集め、自分は賀茂家の式神として保憲の前途を支えるために来たと告げる。喜ぶ忠行とは異なり、保憲は玉屑の言葉に懐疑的だった。面識のない自分を守るために、わざわざ現世に光臨するとは思えないのだ。

 その夜、晴明は玉屑に陽光を避けるための市女笠を渡した。玉屑は泰山府君から平安京に結界を張るよう言いつけられたことを思い出し、外出しようとする。昼間では人に怪しまれるため、夜でなければいけないという。晴明は彼女を一人で行かせるわけにもいかず、同行を申し出る。