「そうだ、学祭、見にきてね!」
駅へ向かう坂道の途中で、七瀬がくるりと振り返った。
茜色に染まる空。
栗色の髪が夕陽を受けてやわらかく光る。
いつもと同じ笑顔。
――ただし今日は、制服姿の"男バージョン"。
「どうしたの? この前は歯切れ悪かったのに」
「……だって、この制服姿、見られたくなかったから」
七瀬の視線が、ほんの一瞬だけ揺れる。
あの日、この場所で見せた泣きそうな表情が、ふとよぎった。
あれは迷いじゃなくて、罪悪感だったんだ。
僕に、嘘をついていることへの。
「でももう平気。もう響に隠してることはないから」
まっすぐな言葉だった。
胸の奥に残っていた小さな引っかかりが、静かにほどけていく。
七瀬が一歩、近づく。
「これで僕たち、本当の彼氏と彼女だね」
「まだ理解追いついてないけど……」
正直な気持ちだった。
でも、不思議と嫌じゃない。
「それに、どっちが彼氏でどっちが彼女?」
そう聞くと、七瀬は肩をすくめた。
「まぁ、それは臨機応変に♪」
軽やかな声。
決めつけない。縛らない。
その曖昧さが、今は心地いい。
きっとこれからも、迷うことはある。
それでも。
嘘のない今のほうが、ずっといい。
「学祭、ちゃんと行くよ」
そう言うと、七瀬は満足そうにうなずいた。
坂道に伸びるふたりの影は、
夕暮れの中で、どちらがどちらか分からないくらい自然に重なっていた。
駅へ向かう坂道の途中で、七瀬がくるりと振り返った。
茜色に染まる空。
栗色の髪が夕陽を受けてやわらかく光る。
いつもと同じ笑顔。
――ただし今日は、制服姿の"男バージョン"。
「どうしたの? この前は歯切れ悪かったのに」
「……だって、この制服姿、見られたくなかったから」
七瀬の視線が、ほんの一瞬だけ揺れる。
あの日、この場所で見せた泣きそうな表情が、ふとよぎった。
あれは迷いじゃなくて、罪悪感だったんだ。
僕に、嘘をついていることへの。
「でももう平気。もう響に隠してることはないから」
まっすぐな言葉だった。
胸の奥に残っていた小さな引っかかりが、静かにほどけていく。
七瀬が一歩、近づく。
「これで僕たち、本当の彼氏と彼女だね」
「まだ理解追いついてないけど……」
正直な気持ちだった。
でも、不思議と嫌じゃない。
「それに、どっちが彼氏でどっちが彼女?」
そう聞くと、七瀬は肩をすくめた。
「まぁ、それは臨機応変に♪」
軽やかな声。
決めつけない。縛らない。
その曖昧さが、今は心地いい。
きっとこれからも、迷うことはある。
それでも。
嘘のない今のほうが、ずっといい。
「学祭、ちゃんと行くよ」
そう言うと、七瀬は満足そうにうなずいた。
坂道に伸びるふたりの影は、
夕暮れの中で、どちらがどちらか分からないくらい自然に重なっていた。
