僕の秘密と、彼女の嘘

しばらくして、七瀬が囁いた。

「ねえ、どうして今日、学校まで会いに来てくれたの?」

いつもより少し低い声が耳をくすぐる。

僕は一瞬、言葉に詰まった。

逃げようと思えば逃げられた。
でも、七瀬が勇気を出してくれたのに、僕だけ隠すのは違う気がした。

「この前、柚希…と一緒にいるのを見たんだ」

七瀬が少しだけ体を離して、驚いた顔をする。

「土曜日の夕方。かき氷、食べてた」

「ああ……」

思い当たったように頷くその仕草に、胸の奥がざわつく。

「七瀬が他の男と楽しそうにしているのが――すごく嫌だった」

言葉にした瞬間、自分の気持ちの正体を突きつけられる。

「でも僕は女だし……七瀬を好きになるなんて、おかしいのかなって思って…」

七瀬が小さく息を呑んだ。

「あ……」

しまった。

こんなにストレートに「好き」なんて言うつもりじゃなかったのに。

「あ、いや、その……! でもっ、自分でもよくわかってないんだ! 七瀬のこと女の子だと思ってたし……僕は、男として好きなのかどうかも……」

必死に取り繕う。
でも、もう遅い。
口に出してしまった時点で、もう手遅れだってことくらいわかっている。

穴があったら入りたい。今すぐにでも。

すると七瀬は、少し首を傾げて――

「ねぇ響、キス、しよっか。」