初対面だというのに、七瀬のペースに完全に押し切られ、気づけば家に上げていた。
良くも悪くも家族は外出中だった。
秘密を握られている状況は、正直かなり痛い。
変なことに巻き込まれたらどうする。
そんな最悪の想定を巡らせていると――
「目、閉じて」
来た。
嫌な予感しかしない。
いざという時にどう逃げるか必死に考えながら、僕は覚悟を決めて目を閉じた。
そして――ほんの一瞬。
「……誰!?」
思わず叫んだ。
目の前の鏡に映っていたのは、見知らぬ“男”の顔。
それも、中途半端じゃない。どう見ても、完璧に男だった。
七瀬は何事もなかったかのように、テーブルの上に自分のメイク道具を広げていた。
「ね、ちょっとメイクしただけで雰囲気変わるでしょ?」
アイライナーを指でくるっと回しながら、七瀬が得意げに言う。
「ちょっとって何? 僕の顔だいぶ変わってるんだけど」
本当に一瞬だった。
気づけば、別人みたいになっていた。
「眉描いて、アイライン引いただけだよ。あ、ワックス借りるね」
手際よく髪を整えられる。
「はい、完成!」
鏡の中の僕は、知らない誰かだった。
「……誰だこれ」
言葉がそれしか出てこない。
「おでこ出したほうが男らしいけど、マッシュも似合うね。はい、眼鏡」
いつもの伊達メガネを装着する。
「似合うよ。 かっこいい」
女の子に“かっこいい”と言われるのは、妙にくすぐったい。
思わず自分の本来の性別を忘れそうになる。
良くも悪くも家族は外出中だった。
秘密を握られている状況は、正直かなり痛い。
変なことに巻き込まれたらどうする。
そんな最悪の想定を巡らせていると――
「目、閉じて」
来た。
嫌な予感しかしない。
いざという時にどう逃げるか必死に考えながら、僕は覚悟を決めて目を閉じた。
そして――ほんの一瞬。
「……誰!?」
思わず叫んだ。
目の前の鏡に映っていたのは、見知らぬ“男”の顔。
それも、中途半端じゃない。どう見ても、完璧に男だった。
七瀬は何事もなかったかのように、テーブルの上に自分のメイク道具を広げていた。
「ね、ちょっとメイクしただけで雰囲気変わるでしょ?」
アイライナーを指でくるっと回しながら、七瀬が得意げに言う。
「ちょっとって何? 僕の顔だいぶ変わってるんだけど」
本当に一瞬だった。
気づけば、別人みたいになっていた。
「眉描いて、アイライン引いただけだよ。あ、ワックス借りるね」
手際よく髪を整えられる。
「はい、完成!」
鏡の中の僕は、知らない誰かだった。
「……誰だこれ」
言葉がそれしか出てこない。
「おでこ出したほうが男らしいけど、マッシュも似合うね。はい、眼鏡」
いつもの伊達メガネを装着する。
「似合うよ。 かっこいい」
女の子に“かっこいい”と言われるのは、妙にくすぐったい。
思わず自分の本来の性別を忘れそうになる。
