「一時間目もう終わっちゃうなー。戻る?」
「…お好きにどうぞ。」
「もーう。じゃあ、まだいよー。」
結局いるのか。青空広がる空。グラウンドからは体育の生徒の声。あー、青春ってやつ?
「んー…できるうちにできることやっておきたいよねー。おサボりもその一つ。校則違反もね?」
彼女が隣で少し悪い顔して笑ってる。そういう顔もするのか。
「…できるうちって?」
「えー?…大人になれば授業中に抜け出しなんてできないよー?」
あー、そういう。
「はいはい。」
なにがしたいのかは、わかった。
…皆勤賞は取れなくなったし、まぁいっか。
「翔くん、雑談しよーよ。」
「雑談?」
「じゃあねー、質問!」
「答えていけばいいのね。」
「そうそう!」
また唐突な。まぁ、暇なのは事実だしいいか。
「じゃーあ、翔くんは将来考えてる?」
「将来?」
将来ねー。二年になったんだ。そろそろ進路の話が出てくるのも現実か。
小学生ぐらいならもっとすんなり出てたのになぁ。
「進学?」
「まぁ、進学かな。」
「専門?」
「え、いやー。そこまでは。」
あれ、小学生か…。なになりたかったんだっけなー。
「…先生とか。」
「え?」
「先生とか、ならないのかなーって。」
…あー、そうだ。小さい頃…小学生までは先生になりたかったんだ。…ま、中学からは現実見るようになって諦めたんだよな。
「小学生までは先生なりたかったけど、諦めた。」
「諦めたの。」
「うん。っていうかなんで先生?」
「え?んー…なんと、なく?」
「あー、そう。」
なんとなく…ねー。
「君は?」
「んー?」
「将来、なんか考えてるの?」
「…将来ー?」
彼女は立ち上がって今度はグラウンドを見下ろした。
「…。」
「…んー?」
まさに今考えてますっていうぐらい唸りだした。
「いや、ないならいいんだけど。」
「うん、ない!」
いいとは言ったけどそんな堂々とあっさり言うか?彼女こそ何かありそうだと思ってたのに意外だな。
「ないんだ。意外。」
「そう?今が楽しければいいの!」
…いや、意外とそうでもないのかもな。自由だからこそ、みたいな。
彼女はグラウンドを見下ろしてるから顔は見えない。
「…。」
「さ、次ねー。んー…?」
「…じゃあ俺から。」
「!うん!なにー?」
…いや、踏み込んだ話はいいや。
「花が好きなの?」
「花?んー、まぁ、好きだよ。季節感じるし!」
「…なるほどね。」
「…海行きたいなー。紅葉も見たいし、冬は雪降ってくれないかなー。
あ、夏はひまわりも見たい。…あ、でも。」
「?」
彼女がようやく振り返った。
「夏は七夕だよね!」
「…珍しいね。夏と言えば七夕なんて。」
「そう?一番好きだなー。」
七夕ねー。最近は気づいたら過ぎてるしな。夏は花火とかプールのほうが好きだけどな。
「あ、ここの街七夕祭りあるよ。」
「知ってるよ!行きたいなー…行けるかな?」
「え、知らない。」
俺に訊かないでほしい。家庭事情は知らない。
「行けたら行こーね!」
彼女が楽しそうに笑って言う。…俺は別に行けるから、彼女が行けるかによるけどな。
「がんばれー。」
「!うん!」
また、彼女は嬉しそうに笑った。

