私が一緒に暮らすのは、人気ゲーマーでした

「穂高(ほだか)くん……」

わたしは言いかけたまま、とめた。
名前はわかったけどさ……とりあえずこの人と暮らすんだよね。

てことは、面倒も見たりした方がいいのかな。
だってこんなに不健康そう……。

クマがはっきりしてるけど、こんないい顔がもったいないよ!?
はぁ……こういう人見てるとほうっておけないよ。

「あのさ……俺もできることは手伝うから」

穂高くんはおずおずと言う。消極的な人なのかな?
手伝ってくれるのうれしいけど、この人にできるのかな。

「じゃあとりあえず洗濯を……
というかわたしまず着替えてきますね、制服のままですし」

わたしがそういうと穂高くんはへぇ、という顔をした。
いちいち可愛いな。ってわたしイケメン好きすぎるでしょ!仮にもこの人とは会うの初めてなのに。

「わかった。テレビつけてもいいか?」
「いいですよ、わたしあまりテレビ見ないんです」

わたしがそう返すと、彼は驚いたような顔をしま。
意外と見たりする派なのかな、めずらし。

「……俺はよくBGMにつけてる、ひとりだとさみしいから」
「さみしい?わたしもそういう時よくあります!」

なんか共通点見つかって嬉しいな。穂高くんのお母さんも出張行くぐらいだしお仕事忙しいのかな。

「リモコンってどこだ?」
穂高くんがそういいながらテレビの方向に歩きかける。

―クラっ

穂高くんの体が少しななめる。
わたしはすぐに彼をささえようと、とっさに彼のことを掴む。

元々貧血気味なのか、いやたぶん夜更かししたんだろうなって感じの顔してたしあんまり動かないほうがいいんじゃ。

「穂高くん、大丈夫ですか?わたしがリモコンとるので座っててください!」
「……あぁ、ありがとう」

穂高くんはふわふわとした、頼りない足取りでイスに座る。……あまりにも頼りなさすぎるなこの人。

穂高くんのお母さんが頼むのもしょうがないかも。 
そんな事を考えながら、わたしは自分の部屋へと戻ろうとした。

「どこに行くんだ?」
「二度目ですけど制服着替えに行ってきますね」

やっぱり疲れてるのかな、あんまり無理させないようにしないと。
わたしの過保護な一面がどうしてもうずいてしまう。
だってこんなに頼りないイケメンがいるんだもん、助けてあげないとダメだよね。

いやイケメンじゃなくても助けるよね、
この不健康さは。もう儚くて今にも消えそうだもの。


✽ ✽ ✽
「穂高くん体調は大丈夫ですか?」
「少し良くなった……」

穂高くんは少し体調が良くなったみたいで、今はニュース番組を見てる。めちゃくちゃ釘付けになってる。


ソファにもたれる体はものすっごい猫背で、叩き直したいくらいには曲がってる。

何やってたらこんなに曲がるの?長時間作業でもしてるんかな。

猫背なのにその様がよく似合うイケメン―
とんでもない人と暮らすことになったなぁ。

わたしはマグカップを手に取り、ほっとレモンを入れようとする。声か細いし、こういう時にはあったかいものが一番だと思うんだよね。

穂高くんはそんなわたしを見て「?!」みたいな表情を浮かべた。その様子はまるで何も知らない子猫のようで、
とてもかわいかった。

「ほっとレモン知らないんですか?」
「俺、そういうの飲んだことなくて。水より炭酸派って感じかな」
「水より炭酸派?!」

水より炭酸派って何?!いや炭酸って?
ハテナを浮かべるわたしに穂高くんは焦った様子で、あわあわと説明をする。

「えっと……俺小さい頃から炭酸ばっか飲んできてさ、だから水より炭酸派?みたいな……」

説明しているうちに本人も混乱したのか、説明している手があっちこっちに動いてる。

「そうなんだ……」

小さい頃から炭酸を飲んでるってすごいなぁ。わたしあんまり炭酸飲めないから尊敬。

「ほっとレモン飲みますよね?」

わたしがそう声をかけると穂高くんは、はっとした様子でコクンとうなずく。

赤ちゃんみたいでかわいいのやめてほしい、こっちの心臓にささるから。

そういえば、とカレンダーを見る穂高くん。
今日は給食パンだったな。

まるい白いパンでおいしかった記憶。
でも、あれ?火曜日?火曜日って平日だよね。

明日学校行かなきゃだし。そこまで考えたわたしは持っていたほっとレモンの瓶を落としそうになった。

「穂高くん明日学校ですよ?!」
「え?うん、学校だけど」
「そうじゃなくて!!」



―わたしの波乱万丈な生活はまだまだ始まったばかりのようです。