好きになった人は、みんなのアイドルで

怜央(れお)くんから電話がかかってくる。
「もしもし?」
「おー、悠太郎。久しぶり!日本でオフあるから飯行かないかなと思って。急だけど今晩空いてる?」
「空いてます!行きます!」
「じゃあLINEで場所送るから、また後で」

怜央くんは、俺が前に出たオーディション番組、PROJECT NOVAで一緒だった2個上の先輩。
7人に選ばれてNEON(ネオン)としてデビューした。
俺はセミファイナルで脱落したけど、
番組内でとても良くしてくれていて、
番組後もずっと連絡を取っている。

ーー
「怜央くん、久しぶり」
「おー!悠太郎!久しぶり!」

「NEONめっちゃ見てますよ、忙しそうですね」
「忙しい〜!けど、1週間日本なんだ。ちょいちょい撮影とかあるけど、結構オフ多くて」
「声掛けてくれて嬉しいです、あざす」

たまにLINEはしてたけど、数ヶ月ぶりに会うから話に花が咲く。

せっかくこのタイミングで会えたから、気になっていることを聞く。
「怜央くんはさ、今、彼女とかいます?」
「んー、今はいない。なんで?」
「やっぱ、アイドルって彼女いたらダメですかね」
「あ、彼女いるんだ」
「いや、まだ彼女じゃないんすけど、まだっていうか、好きな子いて」
「うん」
「まじで好きで、付き合いたいなって思ってるんですけど、俺やっぱアイドル諦められなくて」
「……うん」
「彼女作っちゃダメだと思ってたから、迷ってて」

「その子さ、悠太郎がアイドルになりたいの、知ってんの?」
「あ、知ってます。」
「応援してくれてんの?」
「……たぶん。でもまだ、そんな深い話とかはしたこと無くて」
「悠太郎のイメージの問題とかもあるけどさ、悠太郎がデビューしたら、彼女も一緒に耐えなきゃいけないこと、たくさんあるから。ま、俺はそれがダメで最近別れたんだけど」
「……そうですよね、向こうも辛いですよね」

「その子のこと、本気で好きなら、いてもいいと思うよ」
「……本気」
「そう、本気。本気だったらさ、ファンも応援してくれるよ」

「覚悟決めろ、悠太郎。アイドルって別に、何かを諦めないと出来ない職業じゃないと思うよ」
まあ、なんでもってわけにはいかないか、と小さく笑って怜央くんは水を飲む。

アイドルの夢も、紬ちゃんも、諦めなくてもいいのかな。
俺がデビューしても、紬ちゃんは隣にいてくれるんだろうか。

考えても分からなかったけど、
アイドルになる未来と同じくらい、
紬ちゃんが隣にいる未来を手に入れたかった。