好きになった人は、みんなのアイドルで

お昼を食べようと思って学食に入ったものの、やはり人目が気になる。
(……なんか気持ち悪いし、お昼食べなくていいや)
昨日も結局、夜ご飯にゼリーを食べただけ。
食欲が無い日が続いていた。

学食を出ようとして振り返ると入口で悠太郎くんと会う。

「紬ちゃん、おつかれ」
「あ、悠太郎くん……またね」

そのまますれ違おうとする。

「紬ちゃん」
腕を掴まれる。
……え。やめて。こんな人の多いところで。

「紬ちゃん、ごめん、俺のせいなら、話して」
やめて。やめて。……見ないで。いやだ。怖い。
呼吸が浅くなる。胸の奥がつかえる。息ができない。……苦しい。
思わず悠太郎くんの手を振り払っていた。

「……っ、ごめん」
そのまま悠太郎くんの顔も見ずに走り出す。

どこか、どこかで早く1人になりたかった。

トイレの個室に入って、扉を閉めた瞬間、涙が出る。
息が苦しくて、その場にしゃがみ込む。

悠太郎くんの手、強かったのに、振り払ったらあっさり離れた。
そんなことしたくなかったのに。
本当は、話したいのに。

しばらく声を押し殺して泣いた。
どうしたらいいのか、分からなかった。