好きになった人は、みんなのアイドルで

バイトの帰り道。悠太郎くんと駅まで歩く。

「あ、あのね……、木曜の三限か四限、空きコマある?」
悠太郎くんを誘うなんて、初めてで緊張する。

「木曜は三限で終わり。どした?」
「あ、じゃあ、授業終わったら帰るよね……やっぱいい、なんでもない」
「レッスンあるからだいたい16時くらいまでいっつも学食で時間潰してる。だから大丈夫だよ。なに?どした?」

(じゃあ、お願いしてもいいかな。)

「……あのね、学祭で出すパンの試作するんだけど、パンもらってくれない?」
「え、いいの?……めっちゃ嬉しい。」
「ほんと?……良かった。助かる。……お友達はその時間帰っちゃう?」
「あー、拓海と蓮もサークルあるからって残ってること多いよ。聞いとく」
「ありがと。いっぱい焼くから、もらってくれる人探してるの。ほんと助かる。」
「めっちゃ楽しみ、ありがと」

……良かった。
一気にたくさん焼いてみたいけど、どうやって消費しようか困ってたから。

「あのね、塩パン焼く予定なの。三限、調理室借りてて、先輩と試作する」
つい嬉しくて、喋ってしまう。

「そうなんだ、てか大学に調理室とかあったんだ」
「うん、あるよ。うちの学科の教室」
「そっか、紬ちゃん食品科学科だもんね」
「そうそう」
……私の学科とか、覚えててくれてるんだ。嬉しい。

駅に着く。
「じゃあ拓海と蓮に聞いてLINEするねー」
「ありがと、またね」
「またね」

良かった。誘えた。
……木曜日、楽しみ。
パンを焼くことよりも、
悠太郎くんと会えるのが、楽しみ。