好きになった人は、みんなのアイドルで

悠太郎くんと学食で少し話す。
いつもどおりに振る舞っているつもりだけど、
やっぱり他の女の子の視線が怖い。

お昼休みの次のコマも空きコマで、
トイレに行った栞を一人で待っていた。

「紬ちゃん、おつかれ」
顔を上げると美桜ちゃん。
「あ、美桜ちゃんおつかれ」

なんだろう、パン研のことかな。学祭のこととか。
「美桜ちゃん、どうしたの?パン研のこと?」
少し間があって、美桜ちゃんが話し出す。
「……紬ちゃんさあ、抜け駆け禁止だよ」

え。体が固まる。
「……ごめん、なんのこと」
「悠太郎くんのこと。夏休みに仲良くなったの?出しゃばっちゃダメ。皆で協定結んでんだから」
「ご、ごめん……」
「分かればいいの。ちょっと忠告しに来ただけ。紬ちゃんだって、他の女の子たちに嫌われたくないでしょ?」
「……うん」
「じゃね、ダメだよ。自分が特別とか思っちゃ」

美桜ちゃんは友達の所へ歩いて行く。
美桜ちゃんの友達が、こっちを見てクスクス笑っているような気がする。

入れ替わりに栞が来る。
「……友達?なんか感じ悪くない?」
「……うん。悠太郎くんのこと、言われた」
「なんで?あの子、悠太郎くんの何なわけ?」
「美桜ちゃんね、パン研一緒で経済の子なんだけど、ずっと高校の頃から悠太郎くん推してたらしくって」
「だからって紬にとやかく言う筋合い無いよね」
「……うん、でも、抜け駆け禁止って言われた」
「もうなんなの?紬が可愛いから、気にしてるんだよ」
「美桜ちゃんだって可愛いよ、見たでしょ」
美桜ちゃんはパッチリ二重のくりくりな目が特徴的で、
本当にアイドルみたいな見た目の子。
ああいう子が悠太郎くんには、お似合いなのかもしれない。

「でもさ、私も悠太郎くんのこと、好きだから」
口に出したら、少し頑張れる気がした。
「そうだよ!負けんな!」栞が応援してくれている。