好きになった人は、みんなのアイドルで

「農学部の食堂行こうなんて珍しいねー中央混んでた?てかどした?なに?泣いてる?」
「……泣いてない」
「……悠太郎くん絡み?聞くけど?」

経済の女の子の話を聞いちゃってから、
周りの視線が怖くて悠太郎くんと話せない、と打ち明ける。

「……さっきも、逃げてきちゃった。怖くなっちゃって」
「他の女の子とか、気にしなくていいと思う、……って言いたいけど、怖いよね」
「うん……パン研にも経済の子いるし、その子多分そういうの仕切ってるから目付けられたくない」
「でも、ちょっと話すのくらいとやかく言われたくないよね。僻みだよ僻み。自分が話せないからってさ。」
栞が代わりに怒ってくれて少し笑える。
「逆に悠太郎くんに言っちゃえば?あなたのファンが怖くて大学では話せません、って」
「言えないよ、絶対それ悠太郎くん気にするもん」
「そしたら紬がそんなのに屈しないくらい強くなるか、大学では悠太郎くんのこと無視するかの2択になっちゃうじゃん!そんなのおかしいよ!」

「……ほんとはさっき、話したかった」
だめだ、泣きそう。
「でも周りの目が、怖くて、無理だった。もう話せないよ。」
一粒涙が落ちてしまう。
「紬〜泣かないでよ〜私まで泣いちゃう」
いつの間にか栞まで半べそかいている。

「……もう中央の食堂にも行けない、会うの怖い、でもほんとは会いたい」
一回出た涙はなかなか引っ込んでくれない。
「うん、そだね」
「どうしたらいいか分かんないよ……多分、悠太郎くんも避けてるの気付いただろうし」
「そだよね、紬、辛いね」
いつの間にか栞が隣に来て背中をさすってくれる。

ぐすぐすと泣きながら、
ああ私はこんなに悠太郎くんのことを好きになっちゃったんだ、と思った。
悠太郎くんを好きになるっていうのは、こういうこと。
……それでも、好きな気持ちを変えることはできそうになかった。