好きになった人は、みんなのアイドルで

ーー悠太郎サイド

「なんで夏休みって終わっちゃうかなあ」
「仕方ないじゃん」
「また毎日会えるな!」

拓海と蓮と、学食へ向かう。
(あ、紬ちゃんだ)

「お、紬ちゃんおつかれ」
「悠太郎くん、おつかれさま」
「……パン以外も食べるんだ(笑)」
初日から大学でも会えて、浮かれている。
「当たり前でしょ、からかわないで」
不貞腐れたような表情がかわいい。
「ごめんごめん」

バイト終わりとは違って、髪を下ろしている。
服装も、今日はワンピース。こういう服も似合う。
紬ちゃんの女の子らしさが、やけに目に入る。
(……確かに、モテるよな。)

「じゃ、私行くね」
「ごめん、引き留めて。ばいばい」
「またね」

人混みの中に紛れていく紬ちゃんから目が離せない。

「見つめてんじゃないよー」
「もうすっかり仲良しじゃん、俺たちいること忘れてない?」
拓海と蓮の声で我に返る。

「いや、そんなことは、」
「夏休みの話、じっくり聞かせてもらうよ」
「白状しろ」

洗いざらい喋らされる。
一緒に帰ったことも、ジェラートも、パンフェスも、
パンをもらったことも、LINEを交換したことも、
……インスタの2つのアカウントを教えたことも。

「まじ?インスタまで教えたの?」
「……うん」
「大丈夫なの?……まあ、悠太郎が大丈夫だと思ったなら大丈夫か。」
「……なんかさ、あっちのアカウントだけじゃ、違うかなって」
「素の悠太郎でぶつかりたくなっちゃったわけだ」
「ありのままの俺を見ろってな」
「なんかそれ、いいな」

言葉に詰まる。何も言い返せない。
「……好きになっちゃったわけだ」拓海が言う。
「いいじゃん、応援する」蓮も言う。

「……好き、とかじゃ」
好きとかじゃ?ない?
こんなにも、頭の中は紬ちゃんでいっぱいで、
今日も会えて嬉しくて、
紬ちゃんの前ではかっこよくいたいのに、かっこ悪くなってばっかりで。

「……いや、好きなのかも」
口に出したら戻れない気がした。
「でも、俺、彼女とか、」

「アイドルだって、人間じゃん?」
「そうそう、アイドルである前に、自分の気持ちに素直になれよ」

……紬ちゃんへの気持ちと、向き合ってみることにした。
もう気付いてないふりは、できない。