好きになった人は、みんなのアイドルで

ーー悠太郎サイド

夏休み最終日。明日から大学。
今日もバイトが終わった紬ちゃんと駅まで歩く。
明日からも、一緒に帰れるかな。

「明日から授業始まるの、ちょっとだるいね」
笑って話しかけると、
「うん、……ねえ、大学で会った時も、声掛けていい?」
と不安そうに聞いてくる。
(え、なんで、良いに決まってるじゃん)
「いいよ、もちろん」
「……良かった」
安心した表情の紬ちゃん。
……もしかして、俺だけが仲良いと思ってる?

「夏休み終わったらすぐ学祭だね」
「学祭でパン出すんでしょ?もう何出すか決めてるの?」
紬ちゃんのパンが楽しみすぎて、つい聞いてしまう。
「うーん、色々試作はしてるんだけど、悩み中」
「こないだのめちゃくちゃ美味かったから、たぶんなんでも美味い」
「なにそれ(笑)……でも、ありがと」
「試食ならいつでもするよ、任せて」
試食要員として呼んでくれないかな、なんて。

「ありがと(笑)……ねえ、悠太郎くんは学祭で踊ったりしないの?」
「しないよ、俺サークル入ってないし」
「そっか……なんだ、ちょっと見てみたかった」
(……見てみたい?俺の、ダンス?え、嬉しい)

「スタジオのYouTubeにはよく上がってるよ、俺踊ってるやつ。あとインスタのリールとか」
「URL送るね」って呟いてLINEを送る。

「ありがと、後で見る」
答えた紬ちゃんの表情が、ちょっと元気が無いように見えて。
(……え、そういうことじゃなかった?)

少し考えてもう1つURLを送る。
「こっちは内緒にしてね」
最初に教えたアカウントは、
番組で落ちた後に応援してくれてた人に向けて開設したアカウント。
こっちは、本当に親しい人だけに教えているアカウント。

「……え?」
「フォローしてくれたら、そっちなら返せる。ほんとに親しい人だけのやつ。」
「……え。いいの?」
「うん、内緒にしてくれるでしょ?」
アイドルとしてデビューしようとしている自分には、
プライベートのSNSを知っている人が増えることはかなりリスク。
信用できる人にしか教えられない。
でも、紬ちゃんなら大丈夫って思えた。
それに、もっと俺のこと、知ってほしかった。
皆が知っている朝倉悠太郎じゃなくて、もっと、俺のこと。
……って、なんでこんなこと思ってんだろ。

「……ありがと、フォローした」
パンのアイコンのアカウントからリクエスト通知が来る。
「あ、来た。リクエスト承認するね。あと俺もフォローする」
フォローするとすぐに承認される。
パンの写真、風景の写真、友達との楽しそうな写真。

「ありがと、後で見る」紬ちゃんが笑顔になるから
「俺も紬ちゃんのアカウント後で見よ」俺もつられて笑顔になる。

明日も、紬ちゃんに会えるかな。