好きになった人は、みんなのアイドルで

夏休み最終日。明日から大学が始まる。
いつの間にか習慣のようになった悠太郎くんとの帰り道は、
夏休みが終わっても続くのかな。

「明日から授業始まるの、ちょっとだるいね」
悠太郎くんが笑う。
「うん、……ねえ、大学で会った時も、声掛けていい?」
「いいよ、もちろん」
「……良かった」

また女の子に囲まれる悠太郎くんを見ることになるのか。
……ちょっと複雑。

「夏休み終わったらすぐ学祭だね」
「学祭でパン出すんでしょ?もう何出すか決めてるの?」
「うーん、色々試作はしてるんだけど、悩み中」
「こないだのめちゃくちゃ美味かったから、たぶんなんでも美味い」
「なにそれ(笑)……でも、ありがと」
「試食ならいつでもするよ、任せて」
「ありがと(笑)……ねえ、悠太郎くんは学祭で踊ったりしないの?」
「しないよ、俺サークル入ってないし」
「そっか……なんだ、ちょっと見てみたかった」
「スタジオのYouTubeにはよく上がってるよ、俺踊ってるやつ。あとインスタのリールとか」
「URL送るね」って呟いてLINEを送ってくれる。

「ありがと、後で見る」
……実は悠太郎くんのインスタのアカウントは知っていた。
ストーリーを見るのは我慢して、
いいねも押さないように気を付けていた。
フォロワー数もいいねの数も多いアカウントを見ていると、
悠太郎くんは遠い人だって思い知らされるみたいで、
なんだか辛かったから。

「こっちは内緒にしてね」
もう一個、インスタのアカウントのURL。
「……え?」
「フォローしてくれたら、そっちなら返せる。ほんとに親しい人だけのやつ。」
「……え。いいの?」
「うん、内緒にしてくれるでしょ?」
フォローもフォロワーも1桁のアカウント。
え、これ、教えてもらっていいの?
……ほんとに?
……私に?

「y.a」とイニシャルだけのアカウント。
アイコンも風景の写真で、
鍵がかかっているからどんなアカウントか分からない。

「……ありがと、フォローした」
「あ、来た。リクエスト承認するね。あと俺もフォローする」
友達との笑顔の写真。ダンスの動画。……あ、これはお姉さんかな。
「ありがと、後で見る」
同じ返事をすると、
「俺も紬ちゃんのアカウント後で見よ」と笑う。

プライベートのアカウントを教えてくれたことで、
なんだか、悠太郎くんの特別になれたような気がした。
嬉しかったけど、少し胸が苦しくなった。