好きになった人は、みんなのアイドルで

駅前のサイゼで待っているとすぐに栞が来る。
「紬!なんか久しぶり!」
「ね、夏休みなったら全然会ってない気がする」
「ごめんねー私もバイトとか結構入れちゃってて」
「全然、私もバイトしてた」
「悠太郎くんに会えるもんね」
「そう、会えるから」
「素直になったじゃん」
顔を見合わせて笑う。

ドリンクバーを頼んで飲みながら喋る。
夏休み何してた?とか、バイトの話とか。

「で、どーよ。最近、悠太郎くんとは」
「聞いて欲しい話がたくさんあるんですよ」
「えー、なになに?」

何度かバイト終わり駅まで一緒に帰ったこと。
一緒にジェラートを食べた日のこと。
一緒にパンフェスに行ったこと。
パンフェスでカップルと間違われたこと。
クロワッサンを買ってきてくれたこと。
お礼にパンを焼いたこと。
……LINEを交換したこと。

「待って、めっちゃ進展してる」
「……でしょ」
「なのに、どうして浮かない顔してるわけ?」

悠太郎くんのLINEのアイコンを見せる。

「……これが、なに?」
「……我ながら考えすぎだとは思うんだけどさ、彼女が撮った写真かな」
「え、分かんない。本人に聞いてみれば?」
「……っ、聞けないから困ってるんじゃん」
「えー、聞きなよ。良い写真だね、彼女が撮ったの?って。案外友達とか家族とかかもよ」
「……そうなんだけど」
「んー?」
「……写真が実際どうかっていうよりも、彼女いたらやだなって思っちゃって」
「うん」
「推しの幸せってさ、嬉しいはずじゃん」
「うーん、そうとも限らないと思うけど」
「パンフェスの時とか、一瞬ほんとに彼氏だったらいいのにとか、思っちゃって」
「……紬はさ、悠太郎くんの特別になりたいって、思っちゃってるんだ」
「……思っちゃってる」

思っちゃってる。……特別に、なりたい。

「いいじゃん、それで」
「え?」
「推しとか、推しじゃないとか、そういうのいいじゃん。紬が思うように好きでいなよ」
「……いいのかな」
「いいでしょ、好きなように好きでいたらいいじゃん」

好きなように好きでいる、か。

「……うん、やってみる」
「大丈夫だよ、なんなら悠太郎くんも紬に好意持ってそうじゃん」
「やめてよ、そんなわけないよ」

不安とかモヤモヤとかが消えたわけじゃないけど、
私らしく悠太郎くんを好きでいることにした。