好きになった人は、未来のアイドルだった

今日は雨だからかいつにも増して学食が混んでる。
(栞来る前に席確保したいんだけどな……)

空いてる席を見つける。
と同時に、その隣のテーブルに悠太郎が座っているのも見つける。

(あそこ空いてるけど、ゆうたろうくんの隣……どうしよう……)

でもここで席を確保できなかったら詰む。
よし、行こう。

席に座る。悠太郎が顔を上げる。
「あ……お疲れ様です」声を掛けてくれる。
「お、お疲れ様です!」
緊張して声が裏返る。
もう、なんで私はいつもこうなっちゃうんだろう。

ゆうたろうくんも友達を待っているのか一人。
「……雨だからか、混んでますね」
「……そうですね」
え、なにこれ、会話する感じ?

「あ、何学部ですか?ていうか、1年生ですか?」
は、話しかけられた!!!
ドキドキしてるのを悟られないように喋る。
「……はい、1年です。農学部です。」
「俺は経済学部です。1年です。あ、悠太郎です」
(ゆうたろうくん。)
知っていたけれど、本人から名前を聞くのはまた違う。
「私は紬です。」
「…つむぎちゃん」

名前を呼ばれた。自分の顔が赤くなるのが分かる。

「あ、ごめんなさい、馴れ馴れしいか。つむぎさん」
ゆうたろうくんが言い直してくれるので
「……ちゃんで大丈夫です」と答える。
「タメ口でいいよ、1年どうしって分かったし」
微笑むゆうたろうくん。
かっこいい。 どうしよう。直視できない。

「あ、はい……じゃなくて、うん……」

少し間が空いたところで、 ゆうたろうくんの友達と栞が同時に来た。
「わりぃ、待った?」「お待たせー」

タイミングの良さに、ゆうたろうくんと顔を見合せて少し笑ってしまう。
「あ、ごめん。話してた?」
ゆうたろうくんの友達が謝ってくる。
「大丈夫。教室行こ。」と友達に言うと
「じゃあ、また」と立ち上がるゆうたろうくん。

「うん、また」少しだけ手を振って見送る。

姿が見えなくなって息をつく。
「き、緊張した……」
「学食来たら紬が悠太郎くんと喋ってるからびっくりした!」
栞が興奮している。
「仲良くなった?連絡先交換した?」
「そんなわけないじゃん」
「何話したの?」
「……紬ちゃんって呼ばれた」
「推しの名前呼び!やったね!」

まだ耳に、ゆうたろうくんの声が残ってる。
(紬ちゃんって呼ばれた)
また、そう呼ばれたいと思ってしまった。
(名前呼ばれるって、こんなにドキドキするんだ)