好きになった人は、みんなのアイドルで

「女の子から告白するの、どう思う?」
「めっちゃいいでしょ」
栞がサンドイッチを食べながら当然のことのように言う。

「……言おうかな」
呟いてベーグルサンドにかぶりつく。

背伸びでもいい。不釣り合いでもいい。
あなたが好きです、と伝えたくて仕方なくなってた。

サンドイッチを食べ終えた栞が言う。
「紬、応援してるよ」

ーー
カランカラン。ドアが開く。
「いらっしゃいませー!」
悠太郎くんが来る。

イヤホンを片耳外してレジに来る。
「紬ちゃん、おつかれ」
「おつかれさま、悠太郎くん」
悠太郎くん、なんかいつもと違う。なんだろう。

「バイト22時まで?」
「うん、待ってて」
「分かった、待ってるね」

今日は「待ってて」って言えた。良かった。

ーー
22時。
更衣室でふーっと息を吐く。
(あのね、駅前でイルミネーションやってるの。寄って行きたい、かも)
心の中の予行演習ですら語尾が曖昧になる自分がもどかしい。

「お待たせ」
「バイトおつかれ、行こ」

外に出ると寒い。
身を縮めた私を見て、「寒い?」と悠太郎くんが笑う。

「あのさ、駅前でイルミネーションやってるんだって。遠回りして帰らない?」
……私が、さっきまで予行演習してた言葉。
びっくりして「え……」と言うと
「あ、ごめん、イルミネーション好きじゃなかった?」と焦る悠太郎くん。
「ううん、私も今日、悠太郎くんに見に行こって言おうと思ってたから」
気が合うね、ってオムライスの時みたいに顔を見合せて笑う。

駅前のイルミネーションは想像よりも綺麗だった。
「わ!すごい!めっちゃ綺麗!」
告白しようかな、なんて言ってたのを忘れちゃうくらいに綺麗でついはしゃぐ。

遅い時間だからか人もまばら。
大きなツリーの前で立ち止まる。

「ねえ、紬ちゃん」
声を掛けられて振り返る。
「紬ちゃん、好きだよ」
「……俺と、付き合ってください」

時が止まる。息も多分止まってた。
(私……悠太郎くんに、告白された?)

「ダメかな?」
悠太郎くんの不安げな表情を見て、
自分がしばらく固まっていたことに気付く。

「だ、だめじゃない」
「あの、えっと……」
いざとなると言葉が出てこない。
ふーっと大きく深呼吸をして悠太郎くんに向き直る。

「私も、悠太郎くんのことが好きです」
「私で良かったら、よろしくお願いします」

「……良かった。これから、よろしく。紬ちゃん」
「うん、よろしく。悠太郎くん」

ゆっくり二人でイルミネーションを見て回る。
今度は、恋人として。

「あ、時間だ」
23時になってイルミネーションが消灯していく。
だんだん消えていくのが寂しくて悠太郎くんの顔を見ると、
悠太郎くんが優しい顔でこちらを見ていた。

イルミネーションなんか無くても、悠太郎くんが、光って見えた。