君だけのジミニー・クリケット

 窓の外、巨大な入道雲を見つめる彼女の横顔に、僕は吐息のような声で呟いた。

「……着いたら、なんて言うの?」と、小さな不安をついこぼしてしまう。

 彼女はそれまでと違う表情を見せると、「うん……」と小さく不安を見せていた。

 彼女は僕の問いに答える代わりに、重ねた僕の手を、折れそうなほど強く握り返した。

 それからの僕たちは、どんな会話をしたのだろう。

 覚えていることといえば、古く誰も訪れることのなくなった自動販売機を見つめ、書かれた銘柄の文字に「懐かしいねっ」とこぼしただけだったような気がする。

 幾度の停留所に泊まるたび、彼女は経路図を見上げ、不安な表情と沈黙を見せるだけだった。

 彼女が唇をかすかに動かそうとした瞬間、バスが重い排気ブレーキの音を立てて速度を落とした。