5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




【佐原side】



ぐったりと意識を手放した彼女をベッドに横たえ、俺はゆっくりとドアの外へ視線を送った。

そこにはずっと、あいつが立っている。



「盗み見するなんて、タチ悪いね、翔」



わざと、いつも通りの軽い口調で。
でも、声の奥に潜ませた毒までは隠しきれない。


沈黙のあと、ゆっくりと、完全にドアが開け放たれた。


そこにいたのは、今にも足元から崩れ落ちそうなほど、見たこともない色に顔を青ざめさせた翔だった。

こいつが、こんなに余裕のない顔をするなんて。


それだけで、俺の中の独占欲が、
歪な快感として胸を焼く。



「可愛かったでしょ。俺の上に乗って、あんなに切なそうな声を出してる海緒ちゃん」

「お前……っ……!」

「そんな顔するなよ。……でも、もし、これを海緒ちゃんが望んでたとしたら? お前の知らないところで、俺たちがこうなることを望んでたとしたら、どうする?」



残酷な嘘だ。そんなことはありえない。


あの子の心には、いつだって翔がいることなんて、俺が一番よく分かっている。

それでも、目の前の親友の心をズタズタに引き裂いてでも、俺は彼女が欲しかった。


翔の拳が、白くなるほど強く握られる。


その痛みさえ、俺にとっては今の海緒との繋がりを確認するための代償に過ぎなかった。