「……ねえ、海緒ちゃん」
不意に名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
腕で目を隠したままの佐原先輩が、掠れた声で続けた。
「熱……はかってよ」
『やっぱり、体調悪かったですか? 今すぐ体温計を持ってくるので、ちょっとだけ待ってて……』
やっぱり無理をしていたんだ。
そう確信して、私はベッドの端に手をつき、急いで立ち上がろうとした。けれど、その瞬間。
「……待って」
熱い掌が、私の手首を掴んだ。
驚く間もなく、力任せに、でも怪我をさせないような絶妙な加減でぐいっと引っ張られ、私の体はバランスを崩して先輩の胸元へと倒れ込む。
『っ……! 佐原、先ぱ……』
重なる体温に息が止まる。
先輩は私の頭を大きな手でグッと引き寄せ、逃げ場をなくすようにして、自分のおでこを私のそれに押し当てた。
「体温計、いらない。これではかってよ」
至近距離で見つめ合う、熱を帯びた瞳。
触れ合ったおでこから、先輩の激しい鼓動まで伝わってきそうで、頭の中が真っ白になる。
「問題ない」なんて言った自分を叱りたくなるほど、今の先輩は、近くて、熱くて……。
『……っ……』
言葉にならない吐息が漏れる。
先輩の瞳の奥にある、昨日よりももっと深い「熱」に、私は絡め取られて動けなくなった。
