5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




「……海緒ちゃんか。入っていいよ」



返ってきたのは、驚くほど低くて、掠れた声。

私はその声を合図に、お皿を落とさないよう慎重に、そっとドアを開けた。



「失礼します……」



部屋の中は、朝だというのにカーテンが閉め切られていて、ひんやりと暗い。


ベッドの上に横たわっている佐原先輩は、
目に腕をのせて視界を遮っていた。


その姿は、まるで私から逃げているような、
私を避けているような……


そんな、突き放されたような寂しい感覚。



『……体調、大丈夫ですか?』



私の問いかけに、先輩の唇がわずかに動く。



「……うん」



短すぎる返事。いつもの軽快なトークも、
私をからかうような笑顔も、どこにもない。



『ご飯……ここのテーブルに置いておくので、気が向いたら食べてください。もし無理だったら、もっと食べやすいお粥とか……作ってくるので』



努めて明るく、いつものマネージャーとして声をかけるけれど、部屋の静寂に私の言葉が吸い込まれていく。


腕で隠された先輩の瞳が、今どんな色をしているのか分からないのが、もどかしくて、少しだけ怖い。


それでも、私はテーブルにお皿を置いた。