5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




【翌朝】



『みなさんお疲れ様です! おにぎりと卵焼き持ってきたので、練習の合間に食べてください!』



休憩の合図とともに、海緒が大きなトレーを抱えて駆け寄ってきた。


そこには、大きさを揃えて丁寧に握られたおにぎりと、焦げ目ひとつない、鮮やかな黄色い卵焼きがぎっしりと詰め込まれていた。


一つひとつ、乾燥を防ぐために丁寧にかけられたラップ。
その細やかな気遣いに、あいつがどれだけ朝早くから、俺たちのために準備してくれていたかが伝わってくる。



「マネージャー、朝から肉食いたいんだけど! 肉!」



茶化すように言った部員の言葉に、
海緒は腰に手を当てて、ぷいっと顔を背けてみせた。



『だめです! 朝からお肉なんて重すぎます。栄養バランス、考えて作ったんですから!』



「えー、厳しいなー!」なんて言いながらも、部員たちは嬉しそうにおにぎりに手を伸ばしていく。


……強いな、あの子は。


まだどこか気を張っている部分はあるんだろうけど、それでも、こうして男だらけの集団の中に飛び込んで、物怖じせずに意見を言えるようになっている。

昨日までの、俺の影に隠れて震えていた彼女はもういない。


あらためて、海緒の中に眠っていた「芯の強さ」を突きつけられた気がして、誇らしいような、
でもどこか少しだけ遠くへ行ってしまうような、不思議な感覚に包まれた。