「……そのサイダー、いつ買ったんだよ」
佐原が大事そうに持っている、
水滴のついたペットボトル。
その青いラベルが、今の俺には妙に鼻についた。
「んー? これ? 海緒ちゃんがくれたの。いいでしょー、俺だけの『特別』なんだってさ」
佐原はわざとらしく、冷えたボトルを自分の頬に当ててニヤリと笑う。
その瞬間、胸の奥をギュッと締め付けられるような感覚に襲われた。
海緒は、お人好しだ。
自分を助けてくれたり、疲れていたりする奴を見捨てられない。
きっと、汗だくで荷物を運ぶ佐原を見かねて、
彼女なりの「お礼」として買ってやったんだろう。
理屈では分かっている。
……分かってるけど、面白くない。
「……ふーん。よかったな」
素っ気なく返して、俺は奪い取った重い袋にわざと視線を落とした。
俺がいない間に、二人の間でどんな会話があったのか。
海緒がどんな顔をして、そのサイダーを佐原に差し出したのか。
想像するだけで、視界がじりじりと熱くなる。
「守る」と決めたのは俺なのに、俺の知らないところで、海緒が他の男に「特別」な優しさを振りまいている。
『あ、あの……翔先輩?』
俺の沈黙を怒っていると勘違いしたのか、海緒が恐る恐る顔を覗き込んできた。
その不安げな瞳を見た瞬間、やり場のない嫉妬に蓋をして、俺は無理やり喉の奥に溜まったモヤモヤを飲み込んだ。
「……なんでもない。ほら、早く中入れ。夕食の準備、遅れるぞ」
ぶっきらぼうな声しか出せない自分が、
情けなくて仕方がなかった。
