5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




宿の入り口で、遠くから見えてきた二人の姿に、俺は思わず吹き出した。



『すみませんっ、遅くなりました……!』



申し訳なさそうに、軽そうな袋を大事そうに抱えた海緒。

そしてその隣で、両手にパンパンの袋を提げ、今にも倒れそうなほど汗だくになっている佐原。



「……ぷっ、あはは! 佐原、お前汗やばすぎだろ。風呂上がりかよ」



我慢できずに笑い飛ばすと、佐原が肩を上下させながら、恨みがましい目で俺を睨みつけてきた。



「笑うなよ!! ……じゃあ、このバカ重い袋、全部海緒ちゃんに持たせてよかったっての!? 言ってみろよ!」

「ダメに決まってんだろ。お前が持って当然だ」

「ひっでぇ……。俺、一応病人なんだぞ……」



佐原がボソリと呟いた言葉の意味は分からなかったが、あいつなりに必死に海緒を守り抜いてきたことだけは、その滴る汗が物語っていた。



『あああっ……あ、あの、喧嘩しないでください……! 本当に、佐原先輩が全部持ってくださって……』



オロオロと俺たちの間に割って入ろうとする海緒。ツインテールの毛先まで心配そうに揺れている。



「喧嘩じゃないよ、海緒。……佐原、悪かったな。ほら、半分貸せ」



俺は佐原の手から、特に重そうな袋を二つ、
無造作に奪い取った。

ずしりと腕に響く重量感。……これだけのものを、あいつはあんなに暑い中、一度も海緒に持たせようとしなかったのか。



「サンキュ、翔。……あー、生き返るわー」



肩の荷が降りて、大袈裟に伸びをする佐原。
その時、あいつが空いた手で、一本のサイダーを大事そうに握りしめているのが見えた。