5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。



レジを済ませ、膨れ上がった袋をカウンターに並べる。

カゴ二つ分の食材は、パンパンに詰まった袋四つ分になった。これでも三泊四日の全行程を考えれば、まだ少ない方だ。


海緒ちゃんが来る前までの合宿は、もっと酷かった。
袋の数は倍以上で、その中身といったら、彩りなんて皆無の肉、肉、肉の赤いパックのオンパレード。


そんな「野郎の合宿」が、彼女が加わっただけで、袋の中から覗く野菜の緑がなんだかとても新鮮に見える。



「はい、これ海緒ちゃんが持つ袋ね」



俺は一番小さくて、スナック菓子くらいしか入っていない軽い袋を彼女に差し出した。



『ええっ、袋四つもあるのにいいんですか……? しかもこれ、一番軽い……』

「当たり前。女の子に重いもの持たせるわけないでしょ! そのために俺が来たんだから」



目を丸くしている彼女に、俺はいつもの調子でウインクしてみせる。



「海緒ちゃんに重いもの持たせて指でも痛めさせたら、それこそ俺が翔に殺されちゃうよ」



冗談めかして言ったけれど、それは半分以上本音だった。

あいつなら、海緒ちゃんが少しでも顔を顰(しか)めているだけで、「何させてんだ」って本気で食ってかかるだろう。


……結局、俺の口から出るのは翔の名前だ。

彼女を気遣う理由に、親友の名前を借りなきゃいけない。
そんな自分のみっともなさに苦笑しながら、俺は残りの重い袋三つを両手で一気に持ち上げた。



「さ、帰ろっか。翔が首を長くして待ってるだろうしね」



ずっしりと腕に食い込むビニール袋の重み。
それが、今の俺が彼女のためにできる精一杯の「リハビリ」の証だった。