5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。



【合宿当日】



学校の正門前に、日焼けした部員たちと
大きなエナメルバッグが集結する。


照りつける太陽が、今日から始まる四日間の過酷さを予感させていた。



『……皆さん、忘れ物はないですか? 救急セットと予備のゼリー、全部積み込み終わりました!』



集合場所で声を張り上げる海緒の姿に、
俺は思わず足を止めた。



いつもは緩く下ろしている長い髪が、
今日は高めの位置で二つに結ばれている。


……ツインテール。


うなじから零れる後れ毛と、
彼女の動きに合わせて小刻みに揺れる毛先。


幼さと、夏らしい快活さが混ざり合ったその姿は、破壊的なまでに眩しかった。



「……っ」



守る、とあんなに格好つけて宣言したくせに。

今の俺は、彼女とまともに目を合わせることすらできない。心臓がうるさいくらいに鳴り響いて、
全身に熱が回っていくのがわかった。


今この場で一番冷静さを欠いているのは、間違いなく俺だ。



「……翔、お前顔赤いぞ。もう熱中症か?」



横から佐原がニヤニヤしながら肩を叩いてくる。



「……うるせえ。日差しが強いだけだ」



ぶっきらぼうに返しながら、
俺は視線を無理やりバスの積み込み口へと向けた。

これから、あいつとずっと一緒に過ごす四日間。
期待と、不安と、どうしようもない愛おしさが混ざり合って、俺の夏が、今、激しく動き出そうとしていた。