5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。



「ねえ、翔と海緒ちゃんって……まだ付き合ってないんだよね?」


あまりにも唐突で、デリカシーの欠片もない問いかけ。
その一言が放たれた瞬間、屋上の時間は凍りついた。


『……っ! げほっ、ごほっ……!!』

「……うわっ!? あ、あぶねっ……!!」


不意を突かれた海緒はサンドイッチを喉に詰まらせて激しく咳き込み、俺の手元からはペットボトルが滑り落ちて、制服のズボンにお茶が盛大にぶちまけられた。

……なんなんだ、本当に、こいつは。

喉の奥まで熱くなるような感覚と、冷たいお茶の感触が混ざり合って、脳内がパニックを起こす。

佐原の方を睨みつけると、あいつは「あれ? 変なこと聞いた?」と言いたげな、わざとらしいほどキョトンとした顔で首を傾げている。

心臓が、耳の奥でうるさいくらいに警鐘を鳴らしていた。
否定したいのか、肯定したいのか、自分でも分からない。

ただ、隣で顔を真っ赤にして俯いている海緒の反応が怖くて、俺は溢れたお茶を拭うことさえ忘れて、ただ固まっているしかなかった。

逃げ場のない沈黙の中で、あいつの「まだ」という言葉だけが、呪いのようにいつまでも耳にこびりついて離れない。


「確認しておこうと思ってね」


どこまでも平然とした、温度を感じさせない声。
そのあまりに淡々とした物言いに、俺の背筋を冷たいものが這い上がった。


「……何でお前が確認する必要があるんだよ」


湿ったズボンもそのままに、俺は低い声で問い返した。

冗談で済ませるには、佐原の瞳はあまりに澄んでいて、まっすぐだったからだ。

隣に座る海緒も、手を止めたまま、怯えた小動物のように俺たちのやり取りを注視している。