5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。



「くっそ……どこだよっ、どこに隠した……!」


肺が焼けるような熱さを訴えているが、
足を止めることなんて一度も考えなかった。

俺も佐原も、なりふり構わず校内を駆けずり回っているのに、海緒の姿はどこにも見当たらない。

……学校の外か? いや、それはない。

校外へ連れ出せば目撃証言が増えるし、親や警察が動くリスクがあいつらにもあるはずだ。

大事になる前に「片付けたい」なら、必ず校内の死角に潜んでいるはず。

だとしたら、どこだ…


「……ねえ、翔」


隣を走る佐原の声が、低く鋭く鼓膜を突いた。


「なに」

「俺たち……旧校舎の確認、まだしてないよね」


その一言に、心臓が大きく跳ねた。
そうだ。あそこなら、今は物置同然で、放課後に人が寄り付くことはまずない。

海緒を、あんなに怖がりな彼女を、暗くて冷たい場所に閉じ込めるなら、あそこほど絶好の場所はない。


「行くぞ。……今すぐだ」

「……うん。当たり前」


短く応えた佐原が、指の骨をバキバキと凄まじい音で鳴らした。
瞳の奥には、いつもの余裕など微塵もない、暗い殺気が宿っている。

俺たちは言葉を交わす暇も惜しんで、夕闇に沈む旧校舎へ向けて、全速力で地を蹴った。


一室目、違う。二室目……ここも、いない。

焦りで心臓が口から飛び出しそうなほど激しく脈打つ。
その時、廊下の奥から、消え入りそうな、けれど今の俺には何よりも鮮明な「叫び」が届いた。


『……翔先輩っ……たすけてっ……!』

「海緒!!」


思考より先に体が動いていた。
扉が壊れることなんて、その後のことなんて、どうでもいい。

俺は全身の筋力を右足に集約し、目の前の扉を粉砕する勢いで蹴り飛ばした。

凄まじい衝撃音と共に扉が弾け飛び、埃が舞う教室の光景が目に飛び込んでくる。

そこにいたのは……。

醜い嫉妬を顔に張り付かせた俺の元カノと、佐原の元カノ。
そして、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべる五人の男。

その中心で、服を無惨に剥ぎ取られ、震える手で自分を抱きしめている海緒の姿だった。


「……てめえら」


頭の芯が、一瞬で真っ白に燃え上がった。
俺の大切なものに、その汚れた手で、どの口で。

俺の口から漏れたのは、自分でも驚くほど低く、地獄の底から響くような「殺意」を孕んだ声だった。