5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。



「あ! ほら、ちょうど来た! この子だよ。男が好きで、普段から遊び歩いてるんだって」

「へえ、こんなに大人しそうな顔してるのに? ……そそられるねえ」


ニヤニヤと卑しい笑みを浮かべて現れたのは、
見覚えのない男が5人。

落ち着け、落ち着け私。必死に自分に言い聞かせるけれど、心臓の音は耳元でうるさく打ち鳴らされ、呼吸の仕方すら忘れてしまいそうになる。

男5人……。
どうにか、何か、いい方法はないの……っ?

だめだ。パニックで思考が真っ白に染まっていく。

所詮、私にできることなんて、足のすくむ自分を抱きしめて、爪が食い込むほど拳を握りしめることだけだ。


「いっぱい可愛がってあげて? ……案外、いい声で鳴くかもしれないから」


犯人の女たちの、吐き気がするような冷酷な声。

それを合図に、下心しかない視線を隠そうともしない男たちが、じりじりと、獲物を追い詰めるように距離を詰めてくる。


『……っ、……ぁ……』


「来ないで」という拒絶の言葉すら、喉に張り付いて音にならない。

私が必死に耐えている震えも、出せない声も、彼らの歪んだ欲望には「無抵抗な誘い」にしか映っていない。

乱暴な手が伸びてきて、私のジャージが無理やり剥ぎ取られていく。

ショートパンツに指がかけられ、
無慈悲な力が加わった瞬間、視界が涙で滲んだ。


――これを取られたら。
これを奪われたら、また、私は……。


また、知らない人に、心を殺されて、体を汚されちゃう。
せっかく翔先輩が温めてくれたこの体が、壊されちゃう……。

嫌だ。助けて。誰か、助けて…


『……っ……翔先輩っ……助けてっ……!』


それは、私の掠れた喉から絞り出された、
最後の一滴のような叫びだった。

肺がせり上がり、もう上手く呼吸ができない。
視界は涙と過呼吸で白く霞んでいく。

強く握りしめすぎた拳からは、爪が食い込んだ傷口から血がポタポタと冷たい床に滴り落ちていた。


痛い。苦しい。つらい。


……怖いよ。


こんなに惨めな思いをするくらいなら。

せっかく「翔先輩」と呼べたこの場所で、汚されて壊されてしまうくらいなら、いっそ――。


【消えてしまいたい】


そんな、命を投げ出すような絶望が頭をよぎり、
ゆっくりと瞳を閉じた、その時だった。


鼓膜を震わせるような、凄まじい衝撃音が旧校舎の静寂を粉砕した。

まるで教室そのものが悲鳴を上げたかのような地響き。

何が起きたのか分からず、男たちが怯んだ隙間に、夕闇を切り裂くような「怒号」が飛び込んできた。



-海緒side おわり-