5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。

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やべえ、授業に全く集中できねえ。
ペンを回す指先も、教科書をなぞる視線も、全部あいつ――漆山のせいで空回りしている。


ちやほやされたわけでもない。
むしろ、あからさまに避けられている。

俺がここまで執着する必要なんて、どこにもないはずなのに。



ノートを取るのを諦め、投げ出すように窓の外を眺めた。
5月の陽光が眩しいグラウンドに、
あいつの姿を見つけた。体育の授業中だろうか。


……その時だった。


「……まただ」


男の生徒が近づくだけで、あいつは目に見えて震え出す。
けれど、今回は異常だった。

隣に立った男が、親しげにあいつの肩に手を置いた瞬間。
あいつの顔から血の気が引き、崩れ落ちるように膝が折れるのが見えた。

気づいた時には、椅子を蹴り飛ばして教室を飛び出していた。



「おい、翔!? どこ行くんだ!」

「永瀬! 授業中だぞ!」



担任の怒号も、廊下ですれ違う奴らの視線も、今の俺にはただの雑音でしかない。

上履きのままグラウンドへ飛び出すと、案の定、無神経な黄色い声が降り注ぐ。



「え、嘘、永瀬先輩!?」「やばい、生で見るとマジで国宝級……っ!」


あー、うるせえ。
お前らに見せる顔なんて、今は一ミリも持ち合わせてねえんだよ。


「おい、やめろ。そいつが怖がってんのが見えねえのか」


彼女の肩に触れていた男の手を、力任せに弾き飛ばす。


「え、いや……ペアになれって言われたから声をかけただけで……」

「嫌がってんだろ。ペアなんて男同士で組めよ。さっさと離れろ」



怯む男の手首を、逃がさないように強く握りしめる。
その瞬間、周囲の女子から悲鳴に似た歓声が上がった。

……本当に、ヘドが出る。



「男は全員離れろ。女も、こいつを助ける気がないなら消えろ。邪魔だ」