探偵の日記 村田連続殺人事件

 悲鳴が聞こえたような気がして目が覚めた。クマが魚を食べている姿を見ている変な夢は途中で途切れた。
 何があったのか分からず、私は目をこすりながらボッとしていると扉を強く叩く音が聞こえた。
 あくびを手で押さえながら鍵を開けると、焦った表情の美空がいた。
「どうしたの?」
「大変です!山内さんが...」
 聞きたくないその後の事実が頭の中に思い浮かぶ。私は美空の横をすり抜けて、山内の部屋に走った。
 部屋の前には先に駆けつけたと思う藤原と小林がいた。南と佐藤はいないようだ。
 部屋の外のドアの近くに立っていた二人を避けて中を除くと、山内が何か刃物で刺されたらしく血まみれで倒れていた。
 夜中に悲鳴が聞こえていないから、睡眠薬で眠らされてから殺された?隣の部屋が小林と南。
「これで三人も...」
 いつの間にか来ていた南が小さく呟いた。見たところ昨日と一緒の制服だから先に起きていて、着替えに行っていたのかも知れない。
 私は山内の首元に手を当てる。二時間は経っているみたいだ。
「これを見つけたのは誰?」
 追いかけて来た美空に聞いた。
「私です。皆さんが大丈夫か不安で私の部屋から順番に聞いていたんです」
 部屋は奥から順に左側が私、藤原、佐藤。右側が美空、小林、山内、南。
 つまり小林を訪ねて、山内を訪ねたら遺体を見つけたってこと。鍵が空いていたから特に密室でもない。
 ならばこの後美空に色々と聞けば犯人が分かるはず。大体見当はついている。

 私は山内の部屋に鍵をかけて、私と美空以外の人たちを昨日までいた部屋に送り出した。私たちは情報を交換し合ってみんなのいるところに向かった。
 沈んだ空間の中で、南と小林が飲み物を淹れますと言い立ち上がった。
「その必要はないよ」
 えっ、と驚いた表情をした二人がこちらを向く。
「今から毒を入れて次は誰を殺すつもり?…ねえ執事の小林さん」
 下を向いていたみんなの視線が小林に向く。
「何を言ってるんですか?勝手な推理しないでもらって良いですか?」
 小林が私を睨みつける。
「第一の事件、あの事件は暖房をつけているこの器具。ここから睡眠ガスが出ていたの、そうでしょ?」
 小林は表情を変えずに私を睨んでいる。
「あなたは眠らなかった。…マスクの下にハンカチを挟んで」
「…マスクをしていただけで変な妄想をしないでもらいたい」

「じゃあ次。第二の事件は暗闇の中で行われた事件。明るかった空間が急に暗くなったら目は慣れない。だから他のみんなは急に暗くなって、誰がどこで何してるなんか分からない。じゃああなたはどうしたか。それは…片目を閉じてた。それだけのトリック」
「そんなので暗いところで動けるんですか?」
 美空が私に尋ねる。
「ええまあ。本当は両目閉じたい所だけど、さすがに両目だと不審に思われるから片目なら誰も気づかないだろうと思って殺人に及んだ」
 相変わらず小林は硬い表情をしてこちらを見ている。
「最後の事件は効きの遅い睡眠薬を寝る前に出した水に仕込んでた、それだけでしょ?」
 もっと小説みたいな事件を解き明かしたかったと言うのが本音だ。
 犯罪を犯した彼は変わらない表情でどこか遠くを眺めている。するといつの間にか警察のサイレンの音が聞こえてくる。小林はもう何もしないだろう。

 私たちは静かに警察を待っていると、玄関の扉を開く大きな音が聞こえて警察が入ってくる。
「動くな!」
 部屋の扉が開いて、知り合いの刑事、山本桜花を先頭に警察が入ってくる。
「あ、瞳先輩!お久しぶりです。状況が気になってたけど、先輩がいるなら大丈夫ですね」
「だから、私は先輩じゃないから」
 一度も警察官の先輩にはなったことないのに、相変わらず先輩呼びやめてほしい。
 私たちはそれぞれ警察官の車に乗せられて山を降りて、警察署へと向かう。これから長い事情聴取が始まると思うと憂鬱だ。

 私たちは外が暗くなるまで事情聴取をされ、私たちは事務所へと戻った。
 村田邸にある車は後日警察が持って来てくれるらしい。
「瞳さん、今回も大変だったですね」
 ソファに座りコーヒーを淹れた後に美空がそう言った。
「ね、本当に疲れた。まあ何とか解決できてよかったけど」
「けど…なんですか?」
「村田やその他を殺した理由聞いたんだけどさ、実はあの秘密のことを殺した人たちに教えてたらしいの」
 美空は小さく頷く。
「それで殺したらしい...」
 事務所の中に沈黙が訪れる。親が犯罪者だから、酷い目にあったその子供。どちらが悪いかなんて正直分からないけど、この事件はまだまだ続く予感がする。
 私は探偵だから事件を解き明かすのが仕事。そんな私が探偵になりたいと思ったのは、私はただ××の事件を解きたいだけ。そこまではまだ少しだけ遠いのかも知れない。