ライオンのサーカス




 教室へ入ると、向こうの窓の所に座っていた黒髪の男の子が、よ、と火花の杖を持った片手をあげた。

 北村カナトはモネの幼なじみでフィアンセある。
 豪商の一人息子のちょっと乱暴だが優しい男の子で、カナトがモネを溺愛しているのはクラスじゅうの常識だった。
 カナトの魔法の属性が火だというのもクラスでは常識で、カナトはいつも杖から暖かい小さな火花をちりちりさせているのである。



「今日は遅いね。何してたんだよ、モネ」

「ちょっとね」

「ちょっとって何。また碌でもない事なんかしてたんじゃないだろうな?」



 カナトとモネが話していると、後ろから金髪の男の子がやって来た。



「モネ、遅かったね。何かしてたの?」

「シロウ」



 金髪の男の子は九条シロウと言う。
 風の属性の魔法を操る貴族の嫡子で、この男の子もモネの事を大好きだった。
 シロウはカナトにライバル宣言をしていて、魔法使いの卵の3人の三角関係は、この街で知らないものがない位の評判だった。



「シロウ、お前には関係ないよ。僕たちフィアンセ同士の問題だ。口を出さないで欲しいね。」

「モネに関係があるなら、僕にだって関係がある。カナト、キミはいい加減そうやって火を見せびらかすのをやめたらどう?。感じ悪いんだよ。」

「火は僕の力だ。関係ないだろ。モネ、お前、火の男と風の男、どっちが男っぽいと思う?」

「感じ悪。男度は属性では決まらないよ。たまたま運よく火の属性だからって自慢して。商人風情の癖に。」

「うちは金持ちだ。金無しのプライドばっかのお貴族よりよっぽど良いね。そう思うよな?モネ。」

「モネ、カナトなんかと喋らない方が良い。キミの柄が悪くなる。」

「言ってくれるね。なんならこの火の粉でもお見舞いしようか?。言う事変わんじゃねーの?。」

「変わらないよ。キミが使いそうな魔法ならもうマスターしてある。モネ、僕逆魔法使えるから、カナトに何かされたら頼ってね。」

「……」



 モネはほう、とため息をついて、鞄を置いて席についた。