許されぬファーストキス

既読スルー

この日から、里美は常雄のメッセージに既読スルーを続けるようになった。最初のうちは彼女の体調が悪いのかと思っていた常雄だったが、日が経つにつれて不安が募った。彼は毎日、デイケアで里美を見かけるたびに声をかけたが、彼女は以前のような明るい反応を見せなくなっていた。ある日、常雄は意を決して里美に直接話をすることにした。「里美、最近どうしたの?何かあったのかい?」
里美は目をそらし、しばらく沈黙した後、静かに口を開いた。「常雄、ごめんね。私、あなたと話すのが怖くなってきたの。」
常雄は驚きとともに不安が募った。「どうして?僕はただ、君を支えたいと思っているだけなんだ。」

里美は涙をこらえながら続けた。「実は、最近、少しずつ記憶が戻ってきているの。でも、それと同時に恐怖も蘇ってきた。工場での事故のこと、あの日の出来事が断片的にだけど、頭の中に浮かんでくるの。」
常雄は驚きと心配で胸が痛んだ。「記憶が戻ってきているって…それは良いことじゃないのか?」
里美は首を振り、目に涙を浮かべた。「違うの、常雄。その記憶が戻るたびに、恐怖が襲ってくるの。あの日の出来事がどれほど怖かったか、少しずつ思い出してしまうの。」
常雄は静かに里美の手を握りしめた。「その恐怖を一人で抱え込まなくていい。僕がいるから、一緒に乗り越えよう。」
里美は常雄の優しさに感謝しつつも、不安が拭えなかった。「でも、常雄、私はあの時、何が起きたのか全部を思い出すのが怖いの。もしその記憶が完全に戻ってきたら、私はどうなってしまうのか…」
常雄は強く里美の手を握り返した。「君がどんなに辛い思いをしても、僕はそばにいる。君を一人にはしないよ。だから、少しずつでいいから、その恐怖を乗り越えていこう。」