先生の質問に、軽く頷いた。忘れるわけない。寒くて、1人で、倒れて、今まで誰も助けてくれなかったんだから。もう、楽になれると思ってたのに。そう思いながら先生の話を聞いていた。
先生の話はこうだった。私が倒れたあと、たまたま近くを通った人がいて、救急車でこの病院に運ばれたらしい。一時は低体温で危なかったらしいけど、必死に先生たちが処置してくれて助かった。その後、私は3日間目が覚めなかったらしい。
「それでね、美月ちゃん。先生ね、美月ちゃんに聞きたいことがあるんだ。美月ちゃんの身体にね、いっぱい痣があったの。もしかしてさ、お父さんとかお母さんとかに殴られたり蹴られたりしてない?」
私は、何も言えなかった。今まで誰も助けてくれなかったのに、今更なんなの。涙が止まらなくなった。そんな私に、先生はタオルを差し出そうとしてくれた。だけど私は、その差し出してくれた手を振り下ろして、病室のドアを開けて逃げ出していた。
先生は、一瞬何があったか分からなそうにしていたが、直ぐに事態を把握して、私を追いかけてきた。
夢中で走ってて、気づいたら先生も居なくなってて、ここが何処かも分からない場所にいた。
「ハァハァ。どうしよう。私、本当に居場所なくなっちゃった。」
先生が助けてくれようとしていることも分かってる。今まで大人はみんな私を裏切ってきた。信じることが怖かった。
