絵里奈が車内から出ると、太陽の腕に軽く手を添えた。
「太陽さん、今日はありがとうございました。生放送、すごく心強かったです」
甘い声だった。
テレビで聞いた清楚な声より、少しだけ近くて、少しだけ強い。
彼女の指が、太陽の袖を滑る。
太陽はほんの一瞬だけ視線を落とし、それから自然に体を半歩引いた。
乱暴ではない。
失礼でもない。
けれど、はっきり距離を作る動きだった。
「こちらこそ。送ってくれてありがとうございます」
声は穏やかだった。
仕事用の、きちんと整えた声。
「でも、ここで大丈夫です。朝比奈さんも遅いので、気をつけて帰ってください」
「もう少しお話ししたかったのに」
絵里奈は笑った。
綺麗な笑顔だった。
でも、その笑顔の奥に、ほんの少しだけ圧があった。
「明日の取材、またよろしくお願いします」
太陽は、やわらかく、けれど隙なく返した。
絵里奈は一瞬だけ目を細めたが、すぐに笑顔に戻った。
「では、また明日」
太陽は小さく会釈した。
運転席の男がバックミラー越しに太陽を見た。
その目が、街灯の下で一瞬だけ光った。
私は、息ができなかった。
車が走り去る。
太陽はそれを見送っていた。
テールランプが角を曲がり、完全に見えなくなったあと、彼は小さく息を吐いた。
ほっとしたような、疲れたような息だった。
その瞬間、彼の視線がこちらへ向いた。
「……向日葵?」
終わった。
「太陽さん、今日はありがとうございました。生放送、すごく心強かったです」
甘い声だった。
テレビで聞いた清楚な声より、少しだけ近くて、少しだけ強い。
彼女の指が、太陽の袖を滑る。
太陽はほんの一瞬だけ視線を落とし、それから自然に体を半歩引いた。
乱暴ではない。
失礼でもない。
けれど、はっきり距離を作る動きだった。
「こちらこそ。送ってくれてありがとうございます」
声は穏やかだった。
仕事用の、きちんと整えた声。
「でも、ここで大丈夫です。朝比奈さんも遅いので、気をつけて帰ってください」
「もう少しお話ししたかったのに」
絵里奈は笑った。
綺麗な笑顔だった。
でも、その笑顔の奥に、ほんの少しだけ圧があった。
「明日の取材、またよろしくお願いします」
太陽は、やわらかく、けれど隙なく返した。
絵里奈は一瞬だけ目を細めたが、すぐに笑顔に戻った。
「では、また明日」
太陽は小さく会釈した。
運転席の男がバックミラー越しに太陽を見た。
その目が、街灯の下で一瞬だけ光った。
私は、息ができなかった。
車が走り去る。
太陽はそれを見送っていた。
テールランプが角を曲がり、完全に見えなくなったあと、彼は小さく息を吐いた。
ほっとしたような、疲れたような息だった。
その瞬間、彼の視線がこちらへ向いた。
「……向日葵?」
終わった。



