別れたはずのママとパパは、愛しの三つ子ちゃんに振り回されています

 心臓の鼓動が速くなるのを感じながら耳を澄ませた。
『目的地の羽田空港までは約一時間四十五分のフライトを予定しております。本日の飛行ルートは概ね良好ですが、途中気流の影響で揺れる可能性があります。シートベルトランプが点灯した際は、シートベルトをお締めください』
 惚れ惚れする低温の綺麗な声に、胸が熱くなる。
 いつか彼が操縦する飛行機に乗客として乗ることが夢だった。その夢がこんなかたちで叶うなんて……。
 多くのパイロットがいる中で、偶然にも彼が副操縦士として搭乗した便に乗ることができて本当によかった。結婚式に呼んでくれた友人に感謝しないといけないね。
『私、副操縦士の瀬戸(せと)と機長の湯沢で安全運航に努めますので、空の旅をごゆっくりお楽しみください』
 それから彼、瀬戸の稔(みのる)の流暢な英語でのアナウンスが流れて、ぽろっと涙が零れた。
 稔さんの、副操縦士になったら最初のフライトで私に搭乗してほしいという願いを叶えることはできなかったけれど、夢を叶えた彼が操縦する便に乗ることができて本当によかった。
 飛行中は気流の影響もなく、快適な空の旅を楽しむことができた。無事に着陸し、次々と乗客は飛行機から降りていく。
 私はできるだけ長く彼と同じ飛行機に乗っていたくて、最後に降りた。
「ありがとうございました。お気をつけていってらっしゃいませ」
 客室乗務員に見送られ、荷物を受け取りに行く。
 無事に荷物を受け取って、可愛い天使たちに頼まれていた飛行機の写真を撮っていないことに気づいた。
 帰りだとバタバタして忘れてしまいそう。とはいえ、ゆっくり空港で過ごす時間もない。時刻は十四時過ぎ。友人の結婚式は十七時からを予定しており、遠方から出席する私を気遣い、友人がヘアメイクの予約をしてくれたのだ。
 予約時間は十五時半だから、あと三十分ほどで空港を出なければいけない。空港内のことは知り尽くしている。どこから行けば一番空港デッキに早く着くかも。
 早歩きでスーツケースを引きながら空港内を歩いていると、パイロット二人とすれ違った。
「那奈……?」
 私を呼ぶ愛おしい人の声に足が止まる。ゆっくりと振り返ると、私を見て目を丸くさせる稔さんの姿があった。
「やっぱり那奈だ」
「……稔さん」