腹黒ドクターの独占欲は、傷心MRを離さない

一真さんは一瞬ためらうものの、私と行こうとする。
でも私は「大丈夫です。出てください」と促した。
彼は軽く息をつくと、電話を取った。

「……うん。いや、大丈夫だ。つないでくれ」

受話口から、女性の声がかすかに漏れてきた。

「ですが、本日の予約は十六時の予定では――いえ、そういう意味では……」

話しづらそうな様子に気づき、私はそっと席を外した。
通話は思ったより長く続いた。
戻ってきた彼の表情は暗かった。

「ごめん。予約が前倒しになってしまって……」
「大丈夫です」

私は笑顔を作った。

「今日はこのまま早退しますね。一真さんのアドバイスのとおり、少し休みます」
「ああ。それがいい。……夜にまた連絡してもいいか?」

小さくうなずき、私は心臓外科を後にした。
電話の相手は、きっと患者さんか、そのご家族なのだろう。
でも、受付に任せず彼が直接対応したことが引っ掛かった。
よほど特別な女性らしい。