三角屋根の下で 君と

ふっと泱を見上げれば、近づく綺麗な顔に見惚れている間におでこに触れるだけのキスをされてしまった

「ッ‥泱!!」

『はいはい、寝るんだろ?ご馳走様‥』

意地悪く綺麗な顔で笑う泱が去り際に小さくあっかんべーをしてから笑って部屋を出て行った
のを見届けると、胡桃はその場に座り込み膝を抱えて縮こまる

「‥‥ほんと‥もう‥やだ‥」

意図的に思い出さないようにしていたことをまたされたのに、嫌じゃないなんて思う自分が嫌になる

揶揄ってるだけなら余計に怒れてしまうけど、泱にとってキスってそんなに軽々しく出来ることなのかな‥‥

泱のお父さんがイギリス人だから、キスなんて挨拶代わりみたいな感じなのかもしれない

疲れが溜まってるはずなのに、泱のせいで眠れない私は、夜こっそりと部屋から抜け出し校庭を散歩する事にした

夜の学校って何でこんなに不気味なんだろ‥

当たり前だけど、運動場のライトが付いているわけでもないけれど、見上げた星空はとても綺麗で思わず見惚れてしまう

なんか‥夜空なんて改めてちゃんと見た事なかったけど、あの空から見た私なんて本当に小さな存在で、その小さな悩みなんてかき消されてしまうほど小さなものだと感じる

「はぁ‥‥」

『望月さん、何してるの?』

えっ!?

真夜中を迎えようとしている時間に、声なんてかけられると思っていなかった為、思わず叫んでしまいそうになりながら暗闇からこちらに向かって来た相手を目を凝らして見る

「悠人じゃん‥ビックリした‥驚かさないでよ。‥眠れないからちょっと散歩してただけ。
悠人こそ何しに来たの?」

『宿舎から外に行く望月さんを見かけたから何となく来てみた。寝れないなんて、何か悩みでもあるの?』

悠人の黒髪が月に照らされてよりその濃さに深みを感じさせつつも、泱とはまた違う整った容姿を際立たせている

「悩み‥‥になるのかな。悠人はさ、彼女とかいたりする?あ‥答えたくなかったら大丈夫だから」

2人で校庭に置かれたベンチに腰掛けると、肌寒くて身震いする私に着ていたジャージの上着をそっとかけてくれた